BMW M5 E60の特徴
このBMW M5は、ただでさえ特別なMシリーズの中でもかなり異彩を放っている存在です。その理由はV10のNAエンジン。
今ではV6やV8のツインターボが主体ですが、このV10はダウンサイジングなんて言葉はいざ知らず、F1エンジンの製造ラインで作ってしまった恐ろしく特異なエンジンなんですね。出力は507馬力、排気量は5000ccというスペックはもちろんのこと、それを普通のラグジュアリーセダンに押し込んだというまるっきりお茶目としか言いようがない車です。
そしてそれに合わせられる7速SMGは、セミオートマチックからDCTへの転換が行われる直前、セミオートマチックの完成形とも言えるミッションです。
BMW M5 E60の実用性
なんていうことは、どのサイトをみても書いてあることなので、このくらいにしておきましょう。実際に所有して毎日の生活に使用してみての実用性についてを書いていこうと思います。
このM5はそもそも5シリーズに特別なチューニングを施したモデルですので、基本的な実用性は高いと言えます。このスペックの車といえば2シーターは当たり前、良くても2+2クーペで後部座席には3歳児しか乗れないなんてことはざらですが、このM5は5シリーズの収容力や快適性がそのままのセダンなので、非常に便利です。
セダンでこの車に対抗できる、もしくはこの車を超えるパワーを持った車はそれほど多くありませんし、この車を超える性能=タイムの早さを持ったセダンに至ってはかなり少ないはずです。
もちろん普通の5シリーズと違う部分も少なくありません。言ってしまえばM5ならではの乗り心地の悪さがあります。まずはサスペンションのセッティングと、SMGのショックです。
サスペンションは一番柔らかいセッティングでもかなりスポーティで、がたがたと揺れるため、普通のラグジュアリーセダンとは思えない雰囲気になっています。またSMGはかなり高度な制御をされたセミオートマチックゆえ、逆に乗り手が微調整して衝撃を抑えることのできるマセラティのカンビオコルサのようなガサツなセミオートマチックよりも難しい。うっかりしていると大きなショックが出てしまい、助手席の人を苦しませることになりかねません。
それ以外に関しては、特に問題は感じません。エンジン音も大きい方ではありますが、流石BMWの遮音性は目を見張る物があり、気持ちの良い程度にしか聞こえません。
BMW M5の街中走行
この車の街中での走行は、快適なターボ車に乗っていた人からすればストレスフルとしか言いようがないはずです。低速にはまったくトルクがなく、出だしは車重の重さとトルクの無さが相まって恐ろしくとろい。
普段この車に乗っていてBMWの335iに乗ったときには、あまりにも軽快な動きで「スポーティだな」とむしろ感じてしまったほど。
M5は普段の街中での走行では、最もパワーの無い〜3000回転でひたすらノロノロと発進停止を繰り返すということをしなければなりません。またSMGも低回転であればあるほど変速時のショックが大きく、特にかなりの低回転でのシフトチェンジはブリッピングをしてあげないと恐ろしい衝撃を生んでしまいます。
ただ個人的には、NA高回転型エンジンの車だけ乗り継いできてしまったので、どれもそんなにストレスは感じません。低回転のパワーの無さでいったらマセラティのV8 NAのほうがよっぽどなものです。
M5の快適さを感じるのはむしろ高速道路などですね。車の重量とタイヤの太さのおかげもあり、非常に安定した走行感で、少しの段差などではまったく不安を感じません。またギクシャクしていたSMGも快適につながるようになり、エンジンも高回転を使いながら気持ちよく走ることができます。
いずれにしても、あまり快適でムラのないツインターボに慣れてしまっている人でもなければ、少しのことを意識したり我慢することで街乗りに十分使える車だと思います。