⑤素材で季節感のあるコーディネートに
若い人は特に、季節感を演出するのが苦手です。これにはいくつか理由がありますが、何より季節感のあるアイテムというのは言い換えれば期間限定なわけで、コスパが悪いからです。1年のうちに1ヶ月しか着れないジャケットがセレクトショップから売れ去ったとしたら、それは20代の仕業じゃありませんよ。30代でもない。お金に余裕がある50代の仕業です。
とはいえ季節感を演出するというのは男の最大のお洒落であり、ジャケパン着こなしの楽しみでもあります。そういうわけで、ここではどんな季節にどんな素材を着るのがお洒落なのか、おさらいしておきましょう。
春夏に適した素材
麻(リネン・ラミー)
薄手のコットン
サマーウール
オックスフォード
モヘヤ
シルク
秋冬に適した素材
ウール
カシミア
厚手のコットン
とは書いてみたものの、実際にはこうシンプルにはいかないのがファッションの難しいところです。例えば温かさが売りのカシミアという高級素材ですが、カシミア+リネンの生地を使ったジャケットがある。
何が悲しくてホットコーヒーとアイスコーヒーを混ぜるんだい、べらぼうめぇ。なあんて思う必要はありません。なぜなら、夏と冬の素材と足したものは、なんのことはなく春秋向けのジャケットになっているからです。
いずれにしても、最終的に重要なのは体感です。いくら秋だからと言っても、着ていて暑いのならば無理して大汗かきながらカシミアを着るよりも、夏向けのジャケットを着ている方がよっぽど良い。季節感が合っているというのはすなわち、その日の気温や雰囲気に合っているということです。
7月でもなんとなく肌寒い風の吹く曇りの日であれば、麻100%の盛夏向けジャケットより、春に着るようなコットンジャケットの方がいいかもしれません。2月でも小春日和で青空なら、春物のジャケットを積極的に着てみれば、それを見る人が「ああ、春だな」そと感じることができる。
そういうことなんです。
⑥大胆な色使いにも挑戦する
ジャケパンの難しいところは、だんだんマンネリ化してきてしまうことにあります。せっかく1回目のデートと2回目のデートで「あの人、いつもジャケットでお洒落……!」と女の子に思ってもらえたとしても、3回目が1回目と同じでは女の子を騙すことはできません。
本気の話ですが、1回目に着ていたジャケットを3回目に着ていったとき、「ああ持ってるジャケットは2着なんだなと思った」と後から聞いたことがあります。怖いですね。しかし女の子の方は1回目のときにさりげなくこっちが「シャツとか着てる女の子いいよね」と口を滑らせたら、2回目にはデニムシャツなりワンピースなり襟のついたものをさりげなく着てくる。負けるわけにはいきません。
そういうわけで、ジャケパンがマンネリ化してきたら大胆な色使いにも挑戦していきましょう。もちろん派手な色というのは難しいけれど、実は以外と上手く取り入れる技があります。
まずはカラーパンツです。
特に赤のパンツは紺やグレーのジャケットと相性が良く、以外にも着こなしやすい。その他クリーム色にも近い薄いイエローなどのパステルカラーも良いですね。コツはジャケパン全体の彩度を上げすぎないことです。
失敗せずに合わせたいならジャケットは白やグレーなど無彩色にしてみると良いでしょう。
あるいは同系色のシャツを合わせて、ボトムスとトップスの統一感を出すのもおすすめです。逆にトップスを同系色でまとめてしまうと、なんとなくボトムスが浮いてしまう場合が多いので、少し注意が必要です。
次におすすめなのが、パステルカラーのジャケット。特に水色のジャケットは新鮮さがありながらも、グレーや紺に近い気分で着こなすことができる優れもの。
ちょっと勇気がいるかもしれませんが、水色と黄色を組み合わせれば、非常に爽やかなイタリア的着こなしになりますね。いや、流石にパステルカラーのジャケットはなあ……というあなたに、紺やグレーの次の一着としておすすめなのは、ベージュ。
ベージュのジャケットは安定感がありながらも、伊達男な印象のあるアイテム。特にブルーのデニムとの相性が良いので、休日のコーデでの使いやすさはダントツではないでしょうか。ほとんどの色のシャツを、ジャケットのベージュが上品に引き立ててくれます。
⑦アイテム一つ一つにこだわる
なんとなくジャケパンがお洒落になりきらないなあ……と思い始めた人は、今度はアイテム一つ一つを確認してみるのが重要です。スーツやジャケットなどといったメンズのドレススタイルのジャンルは、少なからずアイテムの品質=お洒落につながることが多い。
品質の良いジャケットの素晴らしい生地は見るからに上品でエレガントな光沢があり、シルエットも身体にピタリと沿っていて体型を良く見せてくれます。 またハンドメイドのジャケットは着心地が軽く柔らかいため、ジャケットを脱がずに長時間着ていられる。同じく品質の良いパンツは脚を長く見せてくれますね。
上質なシャツは襟元を立体的にしてくれるので、そもそも女性に比べて立体感に乏しい男性のシルエットを優雅に飾ってくれます。襟の仕上がりも美しく、エッジが立っていて、高級感が漂います。質の良いシルクのネクタイはそれ自体が、男の余裕を表すアイテムといっても過言ではないでしょう。
ですから、さんざん工夫してもなんとなくお洒落になりきれない!と悩んでいるあなたはアイテムを少しグレードアップしてみると良いでしょう。そして自分の好みに合うブランドを探していくのも良い。これは自由度の高いジャケパンだからこその楽しみです。
ちなみに多くの場合、ジャケパンにはまると色々と遠回りをして無駄なお金も使いながら、結局同じところにたどり着きます。そう、結局は圧倒的なクオリティの生地とハンドメイドの素晴らしい縫製で名を馳せる一流のイタリアブランドにたどり着くわけです。実際にはそういうブランドは高いし、みんなが着るというよりは、着道楽な人々のためにあります。
しかし私の経験としては、「この値段で一流品が買えるのに、おんなじような金額をずいぶんもったいない使い方してしまったなあ」という思いを何度もしました。なのでちゃっかりここで、お洒落を追い求める人が最終的にたどり着くことの多い、超一流ブランドの一例をさらりと紹介しておきます。
ジャケット(スーツ)
Kiton キートン
Brioni ブリオーニ
Cesare Attolini チェザレ・アットリーニ
シャツ
Anna Matuozzo アンナ・マトッツォ
Borrelli ボレリ
Fray フライ
パンツ
Antico Pantalone アンティコ・パンタローネ
ROTA ロータ
ネクタイ
TIE YOUR TIE タイユアタイ
先ほども書きましたがこれらのブランドは気違いじみた値段のものもあるくらい、高いです。しかし良いものを見れば、良くないものも分かるようになる。良いものを知っていれば、「値段のわりに良いもの=コスパの高い物」を見つけ出す力も養われていきます。セレクトショップで見かけたら、「なるほどこれが一流とされるものか」と商品に穴が空かない程度でじっくりと見てみましょう。
着こなしを極め、アイテム一つ一つにこだわり抜き、自分だけのスタイルを見つけられたら、そのときにはあなたは誰よりもお洒落にジャケパンを着こなしているはずです。
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