ツータックのパンツはオヤジ臭いか?
スーツを選んでいるときに、パンツがノータックやらワンタックやらツータックやら色々と存在していることに気づくはずです。タックというのはちょうど太ももの部分に入るヒダのようなもののことで、上の写真で言えば左がツータック、真ん中がワンタック、右がまたツータックになっています。
これは動きやすさと直結するディティールで、タックが多いほど太もも部分にゆとりができて動きやすくなります。しかしゆとりがある分、シルエットが緩くなるということで、細身のシルエットが好まれる現在、タックの入ったパンツはオヤジ臭いものの代名詞とされてしまっています。しかし果たして本当にそうなのか?
今回はスラックス(パンツ)のタックについてしっかりと考えてみようと思います。
タック入りのパンツは単体で履くものではない
まず意識したいのは、タック入りのパンツがもともとクラシカルなものであるということです。クラシカルなアイテムであるということは、クラシカルな着こなしをして初めて、その存在価値があるといえるでしょう。
すると一つ大きな事実があります。すなわち、タックの入ったスーツのスラックスは、スーツの上着があってこそ意味があるということです。そこでタックの入ったスーツをしっかりとウエストで履き、スーツのジャケットを着てみるとどうでしょう。ちょうど股上がスーツの上着で隠れ、太ももの部分のクリースが立体的になる。
これはノータックのスーツよりもずいぶんと立体的で、表情豊かです。
確かにタック入りのスラックスというのはゆったりとしているため、単体で履いてしまっては軽快さが足りません。しかしジャケットと組み合わせたときには、スーツの裾と絶妙なバランス感で立体的なクリースを作ってくれます。
ですからスーツを買うときにはそのタックが何のために入っているかを確認しましょう。ウエストが緩く、別に品質も良くないスーツにタックが入っているのであれば、それは単におじさんの体型に合わせただけのことでしょう。おそらく肩パットは厚く、ウエストは緩いおじさんスーツです。
しかしそれがクラシカルな高級スーツで、他の部分に関しては身体に沿うようなシルエットを追求しているのに、ツータックになっているとしたら、それはスーツで着こなしたときにそれが最も綺麗に決まるからそうなっていると考えるべきです。
上の写真のスーツを見てみてください。左からラベラサルトリアナポレターナ、サルトリオ、アットリーニいずれも一流のブランドで、そのシルエットは若い人が着ても素晴らしい。タックが入っているからオヤジ臭いと決めつけるのは間違っています。
ただし逆に、チノパンなど単体で使うものであればノータックの方がスマートに見えるだろうということも確かです。
その他のチェック点
それでも本当にタック入りで良いか、と不安な人のためにもう少し細かく「オヤジ臭くないタック入りパンツ」について考えてみましょう。基準は以下の通りです。
・安物スーツのタック入りはオヤジ臭いスーツであることが多い
安物のスーツでタックが入っているのは、単により多くの体型の人に合わせて、いろんなおじさん体型の人が買いやすいようにするためです。ですから定価にして5万円以下で買うようなスーツの場合は、ノータックを選んだ方が、その他の部分も現代的なディティールになっているはずですので、おすすめです。
・股上の深いタック入り&高級スーツはクラシックを意識している
逆に上で紹介したスーツのように、値段が数十万円になるようなスーツでツータックになっているものというのは、あえてそれを採用している可能性が非常に高いです。特に深い股上とセットでタック入りになっているものというのは、確信犯でクラシックな雰囲気を狙ったスーツである場合が多い。
現に上のスーツはウエストのしぼられた非常に現代的なシルエットの3着であるにも関わらず、股上が深くツータックやワンタックになっている。これはクラシックを追求した結果に他なりません。
いかがでしたか?
実際には「タックが入っているからオヤジ臭い!」と決めつけてしまうのは間違っています。しかしオヤジ臭いスーツの多くにタックが採用されているというのも事実です。自分がこれから買おうとしているスーツ、着ようとしているスーツがどういうスーツなのか今一度考え、そのタックの意味を考えてみましょう。
するとシルエットのために意味のあるタックなのか、オヤジ体型のためのタックなのかが分かるはずです。
[layerslider id=”9″]