「小説家になりたい!」と思ったは良いけど、皆に「無理だ」と言われるし、才能がないと駄目だと最初からバカにされてしまう。
でもそこで諦める必要はありません。
「小説家になる方法」ではこれから小説を書く人、行き詰まっている人、もっと小説のレベルを上げたい人のために小説家になるための心得や知識、テクニックなどを紹介します!
「小説家の才能」とは何の才能か
よく言われるのが、「小説家になるには才能がなければいけない」ということです。
しかしそれは何の才能でしょうか?? 生まれながら持ち合わせた文章を書く能力のことでしょうか。意外にもそのあたりについては深く言及されていないところです。
たしかに文豪たちは非常に豊かな才能を持っていました。もちろん彼らの中には霊的な啓示を受けて文章を書いたような人物もいるかもしれませんが、しかし彼らのもっていた才能のうちの多くは、彼らが「開花させた」ものでしかありません。
つまり今小説を書いているあなたも、彼ら並みの努力と、経験を積めばそれに近い才能を手に入れることもできなくはないということになります。
今回は具体的に、どんな基礎的な才能を養うべきなのかについて考えてみましょう。
◯観察力
多くの文豪が持っていたものがこれです。
彼らは例えば人間がどんな心情になったとき、どんな表情をするか、またその表情がどんなものに似ていたか、他のどんなシチュエーションで見られる表情に似ていたかを常に観察していました。
そのように常にいろいろなものを観察していることで、ごく小さな動きや習性、違い、性質といったものに気づくことができるようになる。
するとこれが小説を書くときに、文章力となって現れます。
◯情報収集力
文章というのは常に情報のかたまりです。ですからその文章をかけるかどうか、というのはその書き手がどれほどの情報を持っているかということにもかかっています。
まずは新しいことへの興味が重要になります。例えばドストエフスキーは『罪と罰』が発表されるごく数年前に医学界で発見された「旋毛虫」を早速小説のエピローグに取り入れていますね。
ただし情報収集というのは単にニュースを見ることではありません。
世間で何が起きているか、どんな技術ができているか、昔どんなことが起きたか、歴史上にどんな人物がいるか。地球上のあらゆるものがどんな仕組みになっているか、どんなものが存在するか。
それは文献を用いた勉強であり、ニュースの独自な比較検証でもあります。常に表に現れている情報と、そのコンテクストさえも情報として収集する力が重要です。
◯構想力
文豪は自分が見たものや、起きていること、ニュースなどについてを常に分析していました。
なぜそのような事件が起きたか、どんな環境がその原因となったか、どんな心理がそこに働いているか、事件が起きたことでどのような影響が出たか、次にどのような動きになっていくか。
このようなことを常に分析し、考えていることにより、それが構想力になります。
普段から何も考えていない人はいざ物語を書こうとしても、どこかの映画や小説で見たようなありきたりなストーリーしか出てきません。
しかし普段から様々な分析を行っている人は、事件がどういうことをきっかけに、どう展開し、どういう心理が働いているか、どう動いていくかを知っている。すると自ずと、どんな主人公がどんな状況で、どんな事件を起こすかを考えることができるようになっている。
これは恋愛小説を書きたい人でも同じです。常に身の回りの人々の状況を観察し、人がどんな状況のどんな恋愛において、どんな心理でどう行動したかを分析している人は、主人公とそのシチュエーションを設定するだけで自然と物語の構想ができる。
これが構想力です。
物語を作る=決めること
それでは前置きはこのぐらいにして、実際に小説を書いていきましょう。小説になる方法ですからね。
さて、物語はどうする?? そのまま書き出してしまうのは、おそらく9割の人にとって間違いです。多くの文豪がわざわざ創作ノートというものを作っていることからも、そのまま書き出すのはあまりうまくいかないことが多いと分かるでしょう。
そして文豪たちでさえ、創作ノートを何度も書き換えています。多い箇所では5回や10回に渡って設定を書き直しています。彼らはそこまでして設定にこだわっているわけですね。
そう、物語を作るというのは設定を決めることなんです。
もちろん設定は書いている途中で「無理」が出てきたり、方向性を変える必要性が出てきたりすることによって少しずつ変えていきます。しかし最初に一通りの設定が決まっていない限り、「しっかりと落ちのある」物語を作るのは不可能です。
言い換えると
設定があり、物語がある。物語を書き進めるうちに、設定を見直す。
このスタンスを大事にすべき、ということです。
表現力とは何か
文章を書く上で重要になるのが表現力です。その風景をいかに表現し、読み手に伝えるか。これができていない文章というのは、自己満足でおもしろくない文章になってしまいがちです。
また小説をいくら書いても分量が足りない!と悩む人がいますが、そういう人は往々にして情景描写が足りていない。自分の頭の中では大作が映像になっているため理解できているが、その映像がまったく文章化されておらず、他の人が読んでも何も思い浮かべられない文章になってしまっている場合ですね。
そこで表現力を磨け、ということになります。
表現力をどうやったら磨けるのかということですが、これには二つのことをすべきです。
一つには過去の名作を読みあさること。自分がお手本としている、尊敬している小説家を中心に、それに似た文体や表現方法を好んで使う小説家の本を「表現」に注目して何度も読みましょう。
先ほど観察力についても書きましたが、この場合彼らが常に観察し、発見した表現が全て詰まっている。言ってしまえばネタの宝庫になるわけです。
もう一つは知識をつけること。
例えば私がこのような文章を書いたとしましょう。
「彼は助手席からジャケットを掴んで、車を降りて立ち上がった」
これだと思い浮かぶのは、車から何やら上着を持って降りた男だけですよね。しかしここでこのような文章を書いたとしたらどうでしょう。
「彼はベージュ色のレザー張りの助手席に右手を伸ばし、年季の入ったツイードのジャケットを掴むと、かがむように車から降りて立ち上がった」
文章が上手でないのはご了承ください。しかしこのように少し詳しい解説が加わると、この短い文章からでも多くのことを読み取ることができます。
まず彼は右手を伸ばしてジャケットを取った。つまり彼の車は日本車ではなく、左ハンドルの外車であった可能性が高いということです。
さらにベージュ色のレザー張りのシートで、降りる時にかがむほど屋根が低い。左ハンドルであるということはイギリス車である可能性は低く、ドイツ車でベージュ色のレザー張りシートの内装の車は少ないためこちらも可能性が低い。フランスにはスポーツカーが少ない。つまりその車はイタリアのスポーツカーである可能性が高いということが分かります。
さらに彼が手に取ったジャケットは年季の入ったツイードのジャケットです。これは彼が少なからずお洒落な人物であり、また年季が入っていることから物持ちの良い人間である可能性があると分かります。
このことから類推すると、彼は新車と言うよりはやや古い車に乗っているだろうということも考えられる。
またツイードはウール(羊毛)を起毛させた厚手の素材であるためかなり寒い季節であるということも分かりますね。
このように、
「彼は助手席からジャケットを掴んで、車を降りて立ち上がった」
という文章が
「彼はベージュ色のレザー張りの助手席に右手を伸ばし、年季の入ったツイードのジャケットを掴むと、かがむように車から降りて立ち上がった」
になるだけでずいぶんと読み取れることが増えます。
これはほんの一例としての文章ですが、この文章を書くためには自動車に関するちょっとした知識、服の素材に関するちょっとした知識が必要です。
逆に様々なジャンルに関してこのようなちょっとした知識があるとしたら、情景描写や表現はずいぶんと上達するでしょう。
これが表現力のために知識をつけるべき理由です。
いかがでしたか??
これで「小説家になる方法①」は終わりです。
次回をお楽しみに!