『ほっともっと』は、日本全国で親しまれている持ち帰り弁当チェーンで、そのおいしさや手軽さだけでなく、リーズナブルな価格も多くの消費者に支持されています。
私自身、最近までほっともっとを食べたことがなかったのですが、一番安い「のり弁当」を頼んで食べたところ、その美味しさに驚かされました。2024年9月1日から10円値上がりし、税込みで400円になりましたが、それでも500円以下で熱々の出来立て弁当が買えるのは素晴らしいことです。
炊きたてのご飯の上にはおかか昆布とパリパリの海苔が乗り、白身魚のフライや大きなちくわ天が付いています。これがまたジューシーで、自宅で揚げたてを食べるような感覚です。ボリュームも十分で、一つ食べれば夕食として十分満足できます。忙しい時には、これ一つで済ませるという選択がよくわかります。
ところで、ほっともっとの運営会社が「プレナス」という会社だとご存知ですか?プレナスの効率的な経営戦略が、ほっともっとのお弁当の安さに大きく関係しています。
この記事は、公式サイトの「株式会社プレナス2018年2月期決算説明会」をもとに調査しました。なお、プレナスのIR情報が古いのは、創業家によるTOB(株式公開買付け)が成功し、上場廃止となったためです(この話はまた別の機会に)。
では、なぜほっともっとのお弁当が安いのか、資料をもとに考察していきます。
製造小売チェーンへの転換
ほっともっとを展開するプレナスは、一般的な外食産業と異なり、「製造小売チェーン」というビジネスモデルを採用しています。このモデルは、食材の加工から店舗での販売までを一貫して自社で行うもので、外部の業者に頼ることなく、自社内で食材の仕入れ・加工・物流をコントロールすることで、コストを大幅に削減しています。
プレナスは特に、食肉の加工に強みを持っており、年間約55,000トンもの牛肉・豚肉・鶏肉を少品種の大量生産で調理しています。これにより、食材コストを抑えつつ、高品質な弁当を消費者に提供することができるのです。この一貫した製造小売モデルによって、他社が真似できないコスト削減を実現し、弁当を低価格で提供しています。
物流効率の向上
もう一つの大きな理由は、物流の効率化です。プレナスは、全国に展開する店舗に対し、効率的な物流システムを構築しています。各地に物流センターを設置し、それに隣接した食品工場で食材の加工を行うことで、配送コストを大幅に削減しています。
このシステムにより、店舗までの供給スピードを向上させ、新鮮な食材を短時間で届けることが可能になっています。さらに、物流コストが削減されることで、店舗での販売価格を抑えることができるのです。こうした徹底した効率化の努力が、消費者にとっての「安いお弁当」につながっているのです。
この効率的な物流システムの構築に関しては、セブンイレブンが先行して20年以上前から行っているもので、コストを大きく削減することができるようです。
内製化の推進
プレナスは、食材の加工や調理工程の多くを自社内で行う「内製化」を積極的に進めています。これにより、外部の工場や業者に頼る必要がなくなり、コスト削減が実現しています。
自社工場での生産により、品質の管理も容易になり、安定した商品供給が可能となります。また、食材の仕入れから店舗までの流れが一元化されるため、無駄なコストがかからず、その分を価格に反映できるのです。これも、ほっともっとのお弁当が安い理由の一つです。
スケールメリット(大量調達)の活用
ほっともっとは、日本国内で約2,800店舗を展開する大規模チェーンです。この大規模な展開が、さらなるコスト削減を可能にしています。プレナスは、店舗数の多さを活かし、食材や包装資材を大量に仕入れることで、単価を下げることができます。この「スケールメリット」を最大限に活用することで、消費者に低価格の商品を提供できるのです。
また、大規模チェーンだからこそ可能な全国展開の広告やマーケティング戦略も、効果的に行われています。これにより、ブランド力が強化され、消費者に認知されやすくなっているため、店舗への集客も安定しています。
店舗運営の効率化
ほっともっとの店舗運営は非常に効率的です。調理工程がシンプルで、少人数でもスムーズに営業できるように設計されています。従業員の働きやすさを向上させるためのシステムや、ITの活用も積極的に進められており、無駄なコストを削減しています。
また、フランチャイズモデルを採用しているため、直営店だけでなく、加盟店も多く存在しています。このフランチャイズ展開により、地域に密着した運営が可能となり、運営コストを抑えながらも高いサービス品質を維持できています。
このフランチャイズ展開と直営店が混在しているというのも、 コンビニエンスストアの運営方法に近いかもしれません。
効率的なマーケティング戦略
ほっともっとは、マーケティング戦略にも力を入れており、ターゲットに合わせたプロモーションや商品ラインナップを展開しています。例えば、人気メニューである「から揚げ弁当」や「しょうが焼き弁当」は、定期的にブラッシュアップされ、販売数量とリピート率が上昇しています。
また、消費者のニーズに合わせた価格設定も行われており、競合他社との差別化を図ることで、安定した売上を確保しています。こうしたマーケティング戦略により、売上の増加とコスト削減の両立が可能になっています。
同社は米づくり素人が挑むスマート農業という企画で、日本の農業が抱える課題を解決できるように挑戦もしています。
『ほっともっと』のお弁当が安い理由
ほっともっとのお弁当が安い理由は、プレナスが展開する製造小売チェーンモデルや物流効率化、内製化、スケールメリットの活用、店舗運営の効率化、そして効果的なマーケティング戦略など、複数の要素が複合的に関係しています。これらの戦略を徹底することで、高品質かつ低価格なお弁当を提供することができているのです。
経済学的な観点からも先日の『アダム・スミスの「見えざる手」とは何か?分かりやすく現代社会を例に解説』でも紹介しましたが、企業の競争により値下げをしていることが、消費者にとって利便性が高まる例と言えます。
次回ほっともっとでお弁当を購入する際には、ぜひその背景にある企業の努力にも思いを馳せてみてください。値段以上の価値を感じるかもしれませんね!