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ルイヴィトンの原価はいくら?エルメスより庶民派って本当?

最近、初めてティックトックをインストールしたのですが意外に面白く「ルイヴィトンの原価はいくら?」といった類の嘘か本当か分からないようなビジネス情報が溢れています。残念ながらルイヴィトンの原価は機密情報なので、決算書を読んでも知ることができません。今回は筆者の推測で原価とエルメスとの対比について書いてみます。どちらもティックトックでは人気のテーマです。

物の原価って何?

筆者はっしーは一応商業高校を卒業しているので嫌でも簿記で原価計算をさせられました。ティックトックのようなキッズ向けの動画サイトでは、「マクドのコカコーラ原価は5円、ポテトは20円」といった具合に材料原価だけを紹介して、いかに損をしているか煽っています。

原価計算には「材料費」「労務費」「経費」に対して直接経費、間接経費がありますが、分かりやすくいうと次のような話になります。
マクドナルドのポテトの原価が20円、これは嘘かと聞かれたら本当だと思います。原材料として日本マクドナルドホールディングスが米国から輸入する価格はもっと安いと思います。事実、業務スーパーに行っても冷凍ポテトは1kg195円で販売されていますので、マクドナルドのポテトMサイズ135グラムに換算すると26円になります。これが材料原価ということになります。

では、渋谷駅のマクドナルドで熱々の揚げたてのポテトを、いつでも安全に食べられるようにするにはいくら掛かるでしょうか?それは1日10万円以上、月額300万円以上もするテナントの賃料を支払い、何十名もの従業員とバイトを雇い、店舗の造形費や什器などの減価償却を行い、商品を仕入れて適切に温度管理や品質管理を行い、毎日厳しい洗浄を行い、揚げる油を用意して熱々のポテトを提供する訳です。様々な経費を差し引いた後にも、売上管理や税務の費用、さらには法人税を納付して利益から株主に配当を渡さなければなりません。厳密にはテレビCM費用やウェブサイトやモバイルアプリの運営費用なども捻出しなければなりません。
これらを考えると、マクドナルドのMサイズ¥280がいかに良心的な価格で安いのか理解できるはずです。

同じようにルイヴィトンやエルメスの原材料費が安くても、すなわちボッタクリとは一概にいえないことが分かるはずです。

それでも原価が低いルイヴィトン?

ティックトックの動画ではルイヴィトンで最も原価が低いものは「香水」と紹介されていました。根拠はありませんがこれは誤りだと思います。香水の原料は、専業にしているペンハリガンやクリード、ラルチザン、メゾン・フランシス・クルジャンといった香水ブランドと比べても原料が劣っている訳ではなく良心的な作りだと思います。ましては調香に手間がかかり肌に直接着けるものは原材料費が安くとも開発費や各国での法的手続きがアパレルと比べて厳しく複雑です。万一の健康被害が出ないために日本国内も香水の製造販売には免許制にして厳しい規制が掛かっています。

筆者の知り合いの某氏によるとルイヴィトンの原価は2%を切るようにしてプライシングされているらしいです。10万円の商品であれば原材料費と製造費が2000円という訳です。私自身、ルイヴィトンの店舗に行き「さすがにコレは原材料費と製造費用が1%切っているだろうな」と思う商品はいくつかありましたが、中でもホーム用品は製造原価が安いと思われるものが複数ありました。例えばこちらの商品。

モノグラム・キャンバスとダミエ・キャンバスのケースに、アクリル樹脂でできたプリントコースターが収納されています。これで販売価格は139,700円です。大卒初任給が21万円ですので、手取りでコースター1セット買えるかどうかという物価です。

これは完全な筆者の推測になりますが、この商品の製造原価は仮に1000個のロットで製造した場合は700~1,000円程度ではないかと思います。手で触った感じは、グラフィックなどで提供されている通常のアクリルプリント転写でした、ケースもシンプルな縫製で複雑ではなかったので、原価率は1%を切る可能性はあります。

ルイヴィトンのアパレルは2~5%が製造原価?

次にアパレルを予想してみますが、こちらは2~5%が製造原価になりそうです。10万円の商品上代であれば2,000~5,000円が製造原価にあたりそうです。特に利益率が高いのは、Tシャツなどワッペンがついただけのシンプルな衣類です。手ざりでは綿はそれほど品質が高いものではなく、海島綿(シーアイランドコットン)どころかユニクロとジルサンダーがコラボした+Jと同等かそれ以下の綿の品質です。縫製もそれほどとは思えないので、やはり10万円のTシャツでも原価は2,000円前後と推測します。

原価が高いのは革靴とバッグ?

色々な商品を眺めてみて、一概に全ての商品が原価2%ではないということが分かります。例えばソール交換のできないセメント製法で作られたスニーカーは原価率が4~5%前後と推測できますが、本革靴は販売価格167,000円ですが、イタリア製でソールまで革で作り込まれていて、グッドイヤーウェルト製法のため5~7%近い原価が掛かっているように思えます。OEM元の推測まではできませんがサントーニやテストーニが受注しているかもしれません。
バッグも生地こそPVCと安いですが、ホーム用品やTシャツと比べたら原材料費と製造費が掛かっていそうに見えます。

港区セレブはエルメス、ルイヴィトンは庶民派って本当?

これは完全に嘘です。港区セレブが服から雑貨までエルメスで揃えるのは本当ですが、ルイヴィトンは庶民が背伸びして買うものというティックトックの動画は間違っています。
公式サイトを見るとTシャツが10万円、Pコートが40万円、チノパン10万円、インナー7万円、靴10~20万円です。全身をルイヴィトンで揃えると優に100万円を越してしまいます。

例えば庶民的なユニクロで全身揃えても2~3万円あれば十分に品質の良いもので揃えることができます。そう考えると、ルイヴィトンはユニクロの服と比べて30~40倍ほどのプライスで販売されていることになります。
つまりユニクロが年収300万円代の所得層であったとすれば、年収が9,000万円〜1億2千万円ほどの所得がないと同等の感覚で買い物ができないということになります。事実ルイヴィトンで春夏秋冬と4シーズン、衣類を一式揃えたらコストは500~1000万円ほど必要になってしまいます。どんどん新しい商品が出てきますし、クローゼットにボリュームを持たせるような買い方をすれば上記のような費用が必要です。そうなると年収1億円という計算も全くもって見当外れとは言えないはずです。

先ほど紹介したコースターも139,700円、大卒初任給の2/3という価格です。庶民のコースターが40分の1の価格つまり3500円とすれば、どうでしょうか?かなり妥当な水準と言えませんか?フランフランなどでは実際は1500~2000円程度が中心価格帯なのではないでしょうか。

とにかくルイヴィトンはカバンと財布は安いのですが、アパレルやホーム用品は年収が少なくとも5000万円以上の世帯を対象とした価格設定ということが分かります。

エルメスのカバンは実はコスパ良い「激安商品」で庶民でも持てる!

エルメスのバッグ=金持ち、ルイヴィトンの服=庶民という構図は完全な誤りです。
エルメスのバッグこそ庶民で、ルイヴィトンの服こそ富裕層の証です。なぜか説明します。

カバン単体で比較すると本革なエルメスの方が価格は高いです。
エルメスの場合は、バーキンやケリーなど人気ラインがありますが、原料の供給元としてデュプイやアネノイといった一級のタンナーから最も良い革を仕入れています。かたやルイヴィトンは一部本革を用いていますが、人気のシリーズのほんとんどはPVCなので安定して安価に製造することが可能です。
エルメスは職人の手縫いというのもあり、ブランドイメージとしてスイスの機械式時計のように供給量を絞っているためカバンの販売価格は非常に高価です。

希少性を演出するために、入荷の少ないバーキンなんかはいくらお金があっても一元客には出しません。外商顧客や普段から数百万円単位で買い物をする上位顧客に対して、ありがたくバッグを販売する手法が取られています。聞くところによると、それを知らないOLが定価でバーキンが欲しいので毎日エルメスによって入荷していないか確認している人もいるそうです。

それもそのはず、定価で買ったバーキンを買取店にそのまま持ち込むだけで+20〜30万円、革やサイズによってはそれ以上の儲けが出てしまうので鼻の下を伸ばすのは仕方ないことです。水商売をしていたり、お金があって手っ取り早くエルメスのバッグが欲しかったりする人は買取店に並ぶ定価からプレミアム価格が乗せられたバッグを購入します。リセールバリューも高く、正規店に無い色やサイズでも中古市場には豊富に流通しているからです。

なぜ貧乏人でもエルメスが持てるのか?

月収28万円のOLでもバーキンをローンで組んで持てる理由は、人気が高いのでリセールバリューが高いということです。仮に150万円でバーキンを購入したとしても、傷をつけずに丁寧に使えば買い取り価格が120~160万円ほどになる可能性があるからです。
バーキンやケリーの場合は、年数が10年以上経過しているものでも価格があまり落ちることがありません。下手すると、そのときの流通量によっては購入金額を上回る価格で買い取りしてもらえることがあります。これはメンズのロレックスのデイトナやサブマリーナなどに似た現象です。

つまり、OLが無理してローンを組んで購入しても、数年後に高い価格での買い取りが保障されているからです。そのため傷をつけないように持ち手にカレ(スカーフ)を巻いて新品の綺麗さを維持するように丁寧に使います。これが貧乏人でもエルメスが買える理由です。

ではなぜルイヴィトンのアパレルが富裕層しか買えないのか?これもまたリセールバリューが関係します。先ほど話に出たようなTシャツは買取価格が1割を切ります。買取専門店では販売価格の3~4割の高額買取を提示している店もありますが、これらは未使用品でタグが切っていないものであればという条件がついています。
何回か着て洗濯したようなTシャツは、10万円で購入したものでも、5千円〜1万円以下の買い取り価格になるのが一般的です。

とある、有名な買い取りショップでは出張査定をしているのですが、ルイヴィトンのアパレルを購入価格の5%以下で算出することがあるそうです。つまりエルメスのバッグは購入して何度か使っても100万円が90万円までしか落ちないのに対して、ルイヴィトンは100万円が5万円以下の買い取りになってしまうこともあるのです。そうなると真の富裕層しかルイヴィトンの服を買うことはできません。

自分に合ったブランド選びが大切!

国土交通省の発表する日本人の年間の可処分所得(https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001389727.pdf)は、東京都の中央世帯(各都道府県ごとの可処分所得上位40~60%)で392,716円だそうです。先ほどのコースターが2.8個で自由に仕えるお金が終わってしまいます。

LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン グループの2021年度上半期の決算では売上高が286億6500万ユーロ(約3兆6750億円)、純利益は52億8900万ユーロ(約6790億円)を計上したそうです。単純に売上から利益率を見ると、どれだけ割の良いビジネスなのか検討がつくはずです。これには宣伝広告費や自社ビル、文字通りシャンパンなど多額の経費が計上された後の利益です。

世帯収入が5,000万円~1億円あるのであれば、ルイヴィトンでバンバン買い物するのは適正といえますが、庶民的な年収なのであれば、ルイヴィトンを小馬鹿にせずリセールバリューの高いカバンや財布を中心に買い物するのが懸命といえそうですね。みなさんも自身にあったブランド選びをするように心がけると良いと思います。

「ルイヴィトンの原価はいくら?エルメスより庶民派って本当?」への1件のフィードバック

  1. 公表されているはハイブランド(LVMHやケリング等)の粗利率を分析すると平均原価率(生産原価率)15%くらいはあると思います。簿記を勉強されているのであればこの記事の高いものでも7%という原価率はありえないことなど普通にわかると思うのですが…

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