ツイッターを眺めていると、衝撃的なツイートが流れてきました。事実関係が明らかではないので、ここでは内容をボカしますが以下のような話でした。
動画系SNS TikTok(ティックトック)のある女性ユーザーが、渋谷でナンパされて断っているのにしつこく駅まで着いてこられそうになったので自衛のために動画を撮影したところ、相手の男性にスマホを叩き落される事件が起きたそうです。
これだけでも驚くような事件ですが、続きがあり撮影した動画をティックトック内にアップロードしたところ、フォロワーの方たちが相手を探す流れになって、実際に実名と写真が特定されてしまったそうです。
元のティックトックはフォロワーでないと確認できないのですが、このツイートは本日3時頃に投稿されたにもかかわらず、広く拡散され事実関係が分からないまま会社への電話やGoogleレビューの悪評価がつけられています。
被害を受けても捜査してもらえない
本来であれば、被害者の女性が警察に被害を申し出し、事件として受理、捜査を行うのが法治国家として正しい方法です。実際には腕を叩かれてスマホを落とした程度だと、起訴されることは少なく略式裁判が、示談による取り下げになると考えられます。
今回のケースでは、警察に相談したもの「相手の身元が分からないと刑事告発できないと」と受理拒否されてしまい仕方なくティックトックにアップをすることによって大衆に被害を訴える流れになりました。リスクも高く、個人を特定して拡散すると、被害者から加害者になってしまうこともあります。事実関係が確かであっても名誉毀損として反対に訴えられてしまう可能性もあります。
SNSにアップするのは問題のある行為ですが、ナンパされて叩かれてスマホが落ちた程度だと、警察に被害を申し出しても捜査をしてもらえるかどうか定かではありません。財布や自転車の窃盗被害でさえ「あなたも悪いところがあった」などと被害届を受け付けられない場合もあります。
傷害罪は非親告罪ですが、器物破損の場合は親告罪のため被害者が刑事告訴しなければなりません。本来であれば、分からない相手の身元を捜査するのが警察の役目です。
「確定的故意」の感情に訴えかける事件は私刑になりやすい
今回の事件がここまで拡散された理由は、「被疑者が故意で行っている犯罪」、「被害者に共感しやすい」からといえます。これが過失、例えば「前から来た男性がぶつかってスマホが落ちて壊れた。」このようなケースであればSNSを見た人たちも、「もしかしてあなたも画面を注視して前を見ていなかったのでは?」と一方的な被害の訴えに反論するかもしれません。
ところが今回は、動画になっているように写っている男性の行為は確信的であり、女性が嫌がっているのにも関わらず執拗に追いかけ回し、暴力をふるっているので非常に悪質といえます。
このような犯人が確定的、自分中心の快楽のために女声を怖がらせ暴力をふるうというシチュエーションから、SNSを見ている大衆が私刑に出たのだと予想できます。
警察署による告訴届の受理拒否は、弁護士に相談するのが良い
もし仮に、この女性のように「見知らぬ相手から暴力をふるわれ、物を壊された」といった被害を受けた場合は110番通報をして警察に届け出をするのが一番良いです。
被害の届け出は大きく分けると3つあり、「被害届」「告訴状」「告発状」があります。告発状は告訴権者以外の第三者が届け出するものですので、今回当てはまりません。
では被害届と告訴状の何が違うかというと、被害届は最寄りの交番で届け出できますが、告訴状は警察署でなければ届け出できません。また、これが最も重要なのですが、被害届は警察に捜査義務がありませんが、告訴状は捜査する義務が発生します。このため確実に被疑者を裁くには、告訴状を出さなければなりません。
被害届というのは、捜査機関に対して犯罪の被害を報告するもので、処罰を求める意思表示は含まれません。
そうなると、刑事告発するために告訴届を出したいわけですが、警察署に行っても必ず受理されるとは限りません。内容によって受理拒否されたり、司法警察員がいないからといって受理したがらない怠慢な警察官もいます。
そのため断られた場合は、最寄りの弁護士会の法律相談センターなどで弁護士を紹介してもらい、無料相談するのが最も良い方法です。告訴状の作成代行を行うこともできますし、弁護士が一本電話を入れるだけで受理してくれることもあります。
SNSで拡散するというのは犯人を見つけて、職場に圧力をかけて退職させたり、実名と写真がネットに残ったり、社会的な制裁を受けさせることも可能ですが被害者自身が民事や刑事訴訟で起訴されて被告(被告人)になってしまう可能性もあります。今回は「受理されなかった」という司法の隙間に落ちてしまった何ともいえない事件ですが、感情的にならずに対応したいものです。