『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること 』(河合雅司著、講談社現代新書、2017年)を読むと、2030年には日本の人口が大幅に減り、団塊世代の高齢化で東京郊外にもゴーストタウンが生まれて、IT人材が最大79万人不足、百貨店や銀行や老人ホームが地方から消えると予想しています。
トンデモ本のようにレビューされていますが、実際にメガバンクは地方の支店を大幅に縮小して人員削減していますし、三越伊勢丹のような大手百貨店でさえ地方を閉店させるなど本に書いてある状況に近づいているように実感します。そこで、トンデモブログという定評のある大人本でも日本の未来予測をしてみます。
1.スーパーなどで現金取り扱いの廃止
とても驚いたのですが、フェアフィールド・バイ・マリオットに宿泊したときに「施設で一切の現金を扱わない」と案内されました。クレジットカードか電子マネー、交通系ICカードなどで支払いができるそうです。
現金管理はリスクが高く、入金や小銭の用意など様々な手間がかかりますし、計算のミスも起こります。それらを全てデジタルにすることで、フロント業務の人数を減らしてコスト削減にもつながります。
この方法は既に一部のレストランでも既に利用されていて、コース料金を事前に精算して、当日の追加注文はクレジットカード決済という案内があります。
今は一部の高級店や外資系だけですが、銀行の小銭入金が有料化された今となっては小売も大量に受け取る硬貨は廃止したいのが本音のはずです。2030年には主要なスーパーやコンビニなど、クレジットカードや電子マネー限定の店舗が出てくてもおかしくはありません。
駅の改札が数年前まで半数以上が切符対応だったのが、今ではIC専用がほとんどになっています。同じように利用者も柔軟に対応していくと思います。
2.5Gや6G通信の普及によって端末ストレージの減少
今どきのiPhone13 Pro MAXといったスマホは、最新のカメラが搭載され4K動画対応しているのでストレージが肥大化しています。512GBは当たり前、1TBのフラッシュメモリを搭載した機種まで発売しています。
一昔前のデスクトップパソコンよりも大きな容量です。
これらは5Gの普及と共に、クラウドのストレージに移行していくと予想できます。iCloudやGoogleクラウドのように現在では通信速度の関係でリアルタイムに使うのは難しく、ローカルストレージに頼っていますが、5Gの普及により理論上ではアップリンクが10GB/sになるので4Kや8K動画を撮影したままクラウドに保管できるはずです。そうなると端末に大容量のストレージは不要で、意外にも容量が下がっていき128GBなどに減少していくのではないでしょうか。
AR(仮想現実)がどの程度普及するか分かりませんが、ウェアラブルデバイスと連動したゲームやスポーツが出てきそうです。またレンズを2つ以上備えて、空間の距離を計測して3D化して保存するアプリケーションも出てくるはずです。部屋にスマホを向けてグルグル回るだけで、室内の精密な図面が手に入るようなサービスが出て仮想空間と連動したサービスなども出現するかもしれません。
インスタグラムのような写真と動画が飽きてきたときに何が出現するか未知数です。
3.パソコンのクラウドと仮想OSが普及
2030年だとパソコンがまだ存在していると思いたいのですが、今のように大容量ストレージではなく仮想OSを起動して常時ネット接続で利用する方式が普及すると思います。企業用PCや学生用PCなど紛失時にも端末にデータが保管されていないので安全ですし、中央集中管理できるのでデータの漏洩がありません。
会社に山積みにされているノートパソコンをどれでも手に取り、席につけば自身のICカードなどで仮想デスクトップを再現できます。
写真や動画などの大容量データなどもクラウドでレイドを組めばバックアップ体制も完璧で損失がありません。ほんの3〜4年前まではCDを購入して音楽をiTunesに取り込む人が大半でしたが、今ではどうでしょう?配信サイトでハイレゾ音源を聴き放題に移行している人が大半を占めています。同じようにローカル環境にこだわる人が減ってもおかしくありません。
4.合成食品のような機能性食品が普及
近年突如として現れ驚いたのが、コンビニの冷蔵コーナーにあるプロテインバーです。今までプロテインバーというと乾燥したカロリーメイトのような存在で、一部のトレーニングオタクしか購入しないものでした。それが今や鶏ブロイラー種の形成肉に化学調味料や酸味料、味付けを行ったプロテインバーが棚を占めています。
本来人間が食べるものではない合成食品そのものですが、高価になったお弁当を買う余裕が無い人や、時間が無い現代人は食事をそれに置き換えているようです。鶏由来のタンパク質とビタミン剤やカルシウムなど必要栄養素が含まれているという、完全栄養食品のような立ち位置です。
これが更に普及して、貧困層を中心にして合成食品が主食になると想像できます。この合成プロテインバーに、一切れの野菜を載せてピザ風に仕立てた商品まで売られていてショックを受けました。
「貧乏なので吉野家の牛丼しか食べられない」は過去のもの、チェーン店での飲食は豪華なものとなり、貧困層では機能性食品が主流になりそうです。
5.冷凍配食サービスやデリバリーが普及
人口動態統計が高齢者が中心になり、それでいながら世帯数が増えるという事態になっています。既に参入しているメーカーが増えてきましたが、配食サービスや冷凍食品のデリバリーが増加しそうです。
高齢者の一人暮らしでは毎日の自分だけのための料理が大変なのは想像に難くないです。栄養バランスが取れた大量生産の弁当が週に1回配送されたり、お金持ちには毎日セントラルキッチンで調理した作りたての料理が配送されるなど、すかいらーくグループやサイゼリヤなど集中調理にノウハウのある会社が参入するかもしれません。
後期高齢者には在宅確認など、健康確認を兼ねて食事と急病になっていないか、倒れていないかの確認などを兼ねるサービスも出てくるかもしれません。音声認識のスマートスピーカーと連動して、今日食べたいものを指定したり、配送を指示できるようになっているはずです。
6.食品の賞味期限はRFIDとアプリが管理、AIで老人介護も
ユニクロのRFID(Radio Frequency Identification)タグのように、非接触型の安価なタグが普及して、それがスーパーのあらゆる食品や商品に貼り付けられて、カゴに入れれば自動精算してくれると思います。
それを自宅の冷蔵庫に入れると入出庫管理も自動で行い、カロリー計算から賞味期限の管理、レシピの提案などもしてくれそうです。足りない食材をスマホに通知して、出先のスーパーで通知してくれるサービスなども出てくるのではないでしょうか。
IoTと聞くと漠然としたイメージですが、数年以内には冷蔵庫、エアコン、洗濯機、テレビなど主要な家電がWifiで接続されてスマホでモニタリングできるようになるはずです。それだけではありません。
今どきのスマートウォッチには体温、脈拍、酸素飽和度などリアルタイムでモニタリングする技術が搭載されています、それらを応用して家庭用の見守りカメラと連動することで一人暮らしの高齢者をサポートする仕組みができるはずです。AI姿勢推定の画像処理によって、転倒していないか倒れていないかを感知して一定以上の時間起き上がれない場合は自動で民間警備会社などに通報して救出する仕組みができそうです。
現金の扱いが減り、仕事の範囲が狭まった民間警備会社などが巡回のノウハウや家庭用センサーを開発するかもしれません。
7.マンションのスラム化
今の日本はマンション神話が根強く、値崩れしない資産として考えられています。実際に都内の駅近いマンションは10年経っても当時の購入金額を上回るなど、「住める資産」として人気を博しています。ですが労働人口の減少によって購買力が低下した場合、都内であっても地価が下がる可能性があります。
中国人や東南アジアによる投資目的での売買もされて、実需を上回る供給量になっています。既に一部のマンションでは完売しているのに実際には人が住んでいないという状況も見受けられます。別荘地にあるリゾートマンションが1万円で販売されるなどニュースを見かけますが、ただでも売りたいというマンションが存在します。買い手がいなければ所有権を放棄することもできず、居住者が減ったり、管理費の不払いが増えると管理組合はあっと今に破綻します。
ただでさえ30~40年後の取り壊しの費用は積立されておらず、10~20年で行われる大規模修繕の費用も不十分と指摘されています。修繕積立金は現時点での予想金額によって積立られていて、インフレは加味されていません。優れた組合では基金を投資に回しているところもあるようですが、簡単なエレベーターのメンテナンス費用でさえ高騰しているのが実情です。
空き部屋が目立ち、管理費の不払いの部屋に住み着く人が増加して、常駐管理人がいないので共用部分がゴミだらけ、植木も朽ち果てて自転車も放置、エレベーターは故障して止まったまま。エントランスには私物の放置に、車の不法駐車など混沌としたマンションが出てきても何らおかしくありません。
2030年は大げさですが、2040年には人口が減るにも関わらず築40~50年のマンションがぞろぞろ出てくるワケです。
8.道路の慢性的な大渋滞
自動運転が始まると、いつでもスイスイ混雑や渋滞知らず!と思うはずですが、未来はきっとそうなりません。全ての車メーカーが共同して、常時中央制御になるのであれば、信号さえ不要になりますが今あるガソリン車が消えてなくなる訳ではありません。
公道には完全自動運転車が40%、自動運転補助が40%、既存の手動運転車が20%といった具合に混在するわけです。そもそも首都高速の制限速度が50km/hなので自動運転車が、それ以下の速度で走り回るワケです。追い抜きをしようとする、自動運転車や古い今の車が混在して慢性的な大渋滞になる可能性があります。
地方に行くと山道など30km/h制限でも実際には80km/hで走行している実状があります。東京から大阪をつなぐ国道1号線も大半が60km/hが制限速度ですが、地方に行くと夜間はトラックでさえ100km/hで走行しています。これらの道に交通ルールを100%守る自動運転車が混在したらどうなるか予想はつきますね。
9.地方の本屋が無くなる
「新聞読んでる10代ほぼゼロ」というニュースが話題になりましたが、電車で文庫本を読む人がめっきり減りました。一昔前はマンガ本がありましたが、いまでは漫画配信サイトで読むのが主流なのか混雑した電車ではスマホで漫画を読んでいる人を見かけます。
需要が激減した本屋さんでは面白いニッチな本が売れるワケ無く、アイドルの写真集や話題の本しか並んでいません。仕入れ数が少ないためか、中身が見れなようにフィルムで巻いてある店まで出だしています。
本屋さんが減ると「昔通っていたのに残念です」とニュースにコメントを書きながら、全てアマゾンで買っている人ばかりです。都内は面白い本がたくさんありますが、地方都市に行くと車雑誌や健康雑誌など主流で、新書がほとんど置いていない本屋さえあります。
文房具屋との兼業や、レンタルビデオやカフェの併設など色々と試行錯誤している書店もありますが、2030年には2021年の今よりもずっと店が減っていることでしょう。私達が生きているうちに「昔は本屋ってのがあってな〜、あとゲームセンターという店もあって」と子どもたちに話す日が訪れそうです。
10.古来の日本文化の消失
地方都市の人口推移を見ていると、山間部の交通状況が悪い村は毎年どんどん人口が減っています。小学校に生徒が5人しかいないという限界集落も増えていて、少し離れた集落と学校を統合したにも関わらず生徒が10人足らずといった減少も見受けます。
人が減ると道路のインフラ維持もできなくなり、病院や食料品などの問題もあり、村を降りて市町村の人が多い部分に引っ越すようになっています。廃墟になった神社は増える一方、そうなると集落で20世紀まで行われていた伝統的な文化が消失することになります。例えば奥三河で行われていた花祭は、集落の消失を繰り返して近隣の地区と統合を繰り返し、霜月神楽の発祥などのルーツが分からなくなっているそうです。ネットでは一部の廃墟マニアが、廃村に残った道具や社、屋敷から祭りのルーツを探ってブログで公開している人もいます。
昭和まで伝わってきた祭りなどの文化は急激に消失に向かうことになりそうです。
11.遺伝子検査によって生命保険料が変わる
既に5年ほど前から唾液を利用した遺伝子検査によって、先天性な遺伝子に起因する病気になる確率を算出する技術が確率されました。まだ医療倫理や生命倫理などから実用化はされていませんが、個人のDNAによって何の病気になりやすいのか分かります。
髪の色や縮れ具合、耳の形、目の色、海馬容量、運動が得意か、平均的な睡眠時間など様々な情報が統計学的に特定の遺伝子と結びつけて解析されています。例えばガンになりやすい先天的な遺伝子の型を持っているとガン保険料金が高く、特定の因子が無いと値引きされるといった事が実用化されてもおかしくありません。
12.地方自治体の財政破綻
2004年に夕張市の財政破綻しましたが市の負債総額は632億円、税収は9億7000万円で負債総額の割合は65倍になりました。これは他人事ではなく、地方の人口低下と納税額の低下によって様々な行政サービスの低下だけでなく、道路や水道、ガスなどのインフラ整備もままならなくなります。
「図書館の本が古いのは気をつけろ」といいますが、市民が知識を得るための図書館に新しい本がぜんぜん来なくなるのは黄色信号です。教育機関のレベルが下がるだけでなく、病院までも維持できなくなる可能性もあります。
東京都内のように狭い土地に多くの人が住んでいれば良いのですが、広い地域にまばらに人が住んでいる地域はインフラ整備に苦労するはずです。道がボロボロのまま放置、1960~1970年代に設計された橋やトンネル、ダムが耐用年数を超えて使われるのが常態化、老朽化によって崩壊してもおかしくありません。
日本の2030年はどうなる?12の未来予測
大人本の未来予想図どうでしょうか?なかなかリアルじゃないですか?
よくある車が空を飛ぶのは法律上と安全上難しいんじゃないですかね。民家の上を飛ぶとなると、運送用のドローンでさえ無理だと思います。まだ法律が整備されてないうちにドローンの配送で事故が起こり運用が厳しくなる、というのがテンプレじゃないでしょうか。
上記には書きませんでしたが、田舎の僻地に若者の集落が形成されるって予想はどうでしょうか?都会の生活に疲れた人たちが10〜20人程度で集まって暮らすのが点在する。新しいライフスタイルの価値観。
あとは1990年代のレトログッズが大流行するとか?昔のゲームやおもちゃが超高額になるとか。
高齢化した世代が懐かしくなるような昔のものは緩やかに価値が上がって希少になっていきそうです。MDウォークマンとかいいんじゃないですか。
そんなワケで、日本の2030年を適当に予想してみました!