タイトルの通り教えたくないラム選びです。かれこれ15年以上ウイスキーを気に入って飲んでいるのですが、年々コスパが悪化しています。日本がスタグフレーションというのもありますが、世界的にも需要が伸びてしまい美味しいウイスキーは値段が高くなっています。
例えば2015年に紹介した「マッカラン カスクストレングスとレアカスク」は当時、成城石井で7,500円で販売されていましたが、2021年10月時点では220,000円でヤフオクで落札されているんです!なんと30倍になってしまいました。あの頃気に入ってコツコツ買って飲んでたものが、今ではとても手の届かない価格になってしまいました。給料が30倍になれば買えるのですが……。
当時すごく貧乏だったので仕方なく飲んでた「カリラ・カスクストレングス」も終売になってしまい、仕方なく飲んでいた「タリスカー57°ノース(初代)」も終売してしまいました。ラガヴーリンもアードベッグも味が変わってしまい、ラフロイグなんて今のオフィシャルはとても飲めない身体になってしまいました。
昔はバーに行くと、グレンフィディック、グレンリベットなど何でも美味しくて500~800円で飲めたのに今ではさっぱり飲みたい銘柄がありません。白州・山崎12年や響12年なんて1ショット500円で出していた店もありました。
「わ、わわ!やっぱ、はっしー老害ジジイやんけ!」と言われてしまいそうですが、10年でここまでウイスキー界隈が活気づいて、需要過多により味が落ちるとは思いもしませんでした。
そんなわけで最近はこっそりラムに逃げています。
空前のラムブーム!?
絶対に来てほしくないブームNo.1が「シングルカスクのラムブーム」。不人気故に本当に美味しいラムが低価格で流通しています。巷の【2021年版】人気のおすすめ「ラム酒」ランキング20選&基礎知識といったサイトを見ると、オススメラム一覧に次のような銘柄があります。
- マイヤーズラム オリジナルダーク ラム
- ロン・バルセロ グラン アニェホ
- サントリー ラム ゴールド
- バカルディ ゴールド ラム
- ディプロマティコ リゼルヴァ イクスクルーシヴァ (12年)
確かにこれらは入門用としては最適で1本1,000円代から買えるのですが、ウイスキーで例えるとサントリー角瓶からリザーブ程度のクラスに値します。大量生産されているので、シングルカスクのラムと比べると個性が乏しく平凡な味わいになってしまいます。
美味しいシングルカスクのラム酒ランキング
- シルヴァノ・サマローリ
- シルバーシール
- ヴァリンチ&マレット
- ブラックアダー
- ディクタドール ベスト・オブ
- BB&R(ベリーブラザーズ&ラッド)
このあたりが今1~2万円で買えて奇跡的に美味しいラムのブランドです。ディクタドールは蒸留所が直接リリースしているボトルですが他はいずれも独自の買い付けボトルです。ボトラーズ、ネゴシアンみたいな扱いになるため1本ずつ産地が異なり、味も個性も全くの別物です。
写真にあるLMDW (ラ・メゾン・デュ・ウイスキー)は、3種類セットとスコッチのオルトモアを試したのですが、個人的にはそこまで急いで集めたいものではありませんでした。
ウイスキーだけでない蒸留酒の神様サマローリ
上記の中でも格別に美味しいラムが当たりやすいのは、「シルヴァノ・サマローリ」と「シルバーシール」です。どちらも天才的なイタリアのボトラーズですが、ウイスキーだけでなくラムも信じられない品質です。ウイスキーは人気が高すぎて流通量も少なく値段も10万円を超えるものがありますが、ラムは不人気が故に味は同格に美味しいのに安く手に入ります。
シルヴァノ・サマローリ氏は残念ながら2017年に逝去されましたが、残っていたストックを奥さんが引き継いで「マサム」というブランドで少しずつ販売しています。現在のサマローリは厳密にいえば本人が選んだストックではないのですが、優秀な後継者が選んでいるようでどれを飲んでも感動するほどのクオリティです。
ブルゴーニュの神様アンリ・ジャイエのように価格高騰による投資目的であれば、本人が存命中にボトリングしたものを選ぶのが良いですが、日常で美味しく飲みたいのであれば現行品で全然美味しいです。
特にラムはコスパ抜群で、1万円代とは思えない香りと味わいが楽しめます!
SILVER SEAL(シルバーシール)も激ヤバなラムをボトリング
イタリアのインディペンデント・ボトラー・ブランドである「シルバー・シール」は、「ウィスキー・アンティーク」という小さな会社のディレクターであるマッシモ・リギが販売しています。スコットランド産の最高級ネクターやカリブ産のラム酒などを幅広く取り揃え、記憶に残る表現のスモールボトリングを厳選してリリースしています。
こちらもコツコツ集めているのですが、同じようなマニアが少数いるようで買おうと思っていた銘柄が売り切れていたりすることもあります。私も慌てて某蒸留酒販売のシルバーシールを買い占めてしまいました。
タイミングによって年に数回は入荷すると思うので、見つけたらシルバーシールも買ってみてください。
ちなみに今は執筆しながら、シルバーシールのニカラグア1998年とヴァリンチ&マレットのダイアモンド・デメララ2003年を飲んでいます。産地はガイアナ、トリニダード・トバコ、ベネズエラ、グレナダ、ジャマイカ、ニカラグアなんかがおすすめです。
ラムは熟成期間によって、ホワイトラム、ゴールドラム、ダークラムと色で分類分けされますが、必ずしも濃い(ダーク)=美味しいというわけでなく、限りなく透明に近いホワイトラムでも非常に華やかな香りで感動するものもあります。これもまたウイスキーに少し似ています。
熟成期間が長いほど美味しいというわけでなく、ラムの製法や原料、蒸留方法などによっても味に大きく影響が出ます。サマローリなんかは短期熟成でも美味しいものをリリースしています。それだけでなくシングルカスクにこだわらずに、複数の国のラムを大胆にブレンドして美味しいのが凄いところです。ロッキーパテルの葉巻のように、各国の良い部分をブレンドする技術も高いということですね。
忘れていけないのが、抜栓直後はセメントのような香りがして不味いことがあるということです。抜栓して香りの本領発揮するまで半年〜数年を見ておくと良いです。一気に飲んでしまわずに、ちびちび数年掛けて飲むのがオススメです。
ただモノにもより、ディクタドール BEST OF エクストリーモなんかは、シェリーの空樽で熟成させて美味しいのですが1年以上経つと少し酸化してきます。それもまた美味しいのですが、長く空けておくと酸化のリスクもあるということです。
そんなわけで多くの人にばれないうちに、この美酒を楽しんでくださいね。