『本物の金持ち』の服装は質素なのか? – ライター田中のファッション考察

本物の金持ちは、服にお金を掛けずに質素なものを着ている。これは経営者のための雑誌や、様々なウェブサイトなどで度々言われていることですよね。

さて、これは事実なのでしょうか?

ビジネスノウハウなどを解説する雑誌やウェブサイトで取り上げられることの多いこの話題を、今回はファッションを専門とする『大人になれる本』のライター田中が解説いたします。

金持ちの巻いているマフラーはいくら?

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さて本当に富裕層の人達がファッションにお金をかけているか、いないかをはっきりさせるには、富裕層の女性が巻いているマフラー(ストール)の値段を見てみるのが一番です。

富裕層レディースに最も人気のあるマフラーはどこのブランドか、ご存知でしょうか。

イタリアの生地ブランドで、素晴らしいカシミアを扱うことで有名なLoro Piana ロロピアーナですね。

その他PIACENZA ピアチェンツァやCOLOMBO コロンボ(いずれも生地ブランドのもの)なども支持されていますが’、やはりダントツ人気はロロピアーナ。

割にシンプルなファッションをしている人でも、手触りの良さから選ぶことが多いようですね。事実ある裕福な50代〜の女性とお話をしていると、ロロピアーナは一般常識のように話題に出てきます。

ちなみに高級マフラーというとバーバリーを思い起こす人もいるかもしれませんが、バーバリーはあくまでコートで有名なブランドであり、マフラーはコートだと流石に手のでない人がマフラーを購入する場合が多いですね。

さて、そんなロロピアーナのマフラーですが値段はおよそ7万円〜10万円となります。サイズや生地によって値段は変わりますし、カシゴラ、ヴィキューナ混カシミアといった生地であれば20万円〜のものもざらにあります。

ではその値段のマフラーに合わせる服は?

そう考えると、富裕層の服装は決して「安くはない」ということが分かりますね。

富裕層は服にお金を掛けている

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マフラーの例から分かるように、富裕層は服装にお金を掛けていることがほとんどです。

「節約しているから金持ちなのだから、服にお金を使わない」という意見もありますし、確かにそういう人もいるかもしれませんが、億単位で金銭を動かしている人々にとって、数十万円を服装に掛けることは全く不自然ではありません。

余裕のある人は、美味しい物を食べますよね。毎日のように最高級の希少な食べ物を食べているわけではなくとも、良い素材を用いて、良い調理をされたものを食べているはずです。

衣食住、と言われる通り服も同じです。

素晴らしい素材を用いて、高いレベルで仕立てられた物を着たいと余裕のある人達は考えます。その方が着心地が良く、手触りも気持ちがよいですし、お洒落でエレガントに見えるからです。

ではなぜ「金持ちは質素でファッションにお金を掛けない」と言われるのか。それは彼らが高品質なものを、センス良く着ているからです。

例えば上の写真のジャケット、左が80万円で右が60万円だということに写真を見ただけで気づいたでしょうか。

もちろん気づかないですよね。ファッションに関心がある人でもせいぜい5万円程度にしか見えないと思いますし、関心が無ければユニクロと同じに見えても仕方がありません。

実はどちらも世界最高峰の既製服ブランドと言われ、世界中の首相を始め数多くのエクスクリューシヴ達が買い求めるKiton キートンというブランドと、Brioni ブリオーニというブランドのものです。

これらのジャケットには、着ていて見えるところにブランドロゴが入っているわけでもなく、周りの人からしたら地味な部類に入る服でしょう。では富裕層はどこにお金を払っているかと言えば、品質にお金を払っているのです。

最高級の柔らかな着心地、シルエットの良さ、滑らかで上品な光沢感のある生地。本当にお金がある人はそういったものに価値を見いだします。

さらに品質の良い服は気持ちよく着れるだけでなく、長持ちし、ずっと着ていくことができます。あまりに上質な服になると資産価値さえも持つようになり、いざ着なくなって売却しても新品価格の5〜10分の1の値段がついたりします。

「お金持ちは無駄遣いをしない」という意見が正しいとしても、品質の良い服を買うのは決して無駄ではないと言えるはずです。

繰り返しになりますが、富裕層は服装にお金を使います。

しかしブランドロゴが入っていたり、奇抜だったりと人から見て「金がある」と思わせるようなファッションではなく、品質の良いものを選ぶので、一見「地味」に見えるのです。

 

『金持ちは質素』は成金への軽蔑

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では、どうして繰り返し繰り返し、どこも口を揃えたかのように富裕層が服装にお金を使わない、質素だというようなことを書いているのか?

これは完全に、成金主義な人々への軽蔑によるものです。

皆さんも上の写真の与沢翼氏のような、メディア露出の多い『億万長者』などと言われる人々のファッション、芸能人のブランド服に「○○万円」を使うといったような番組を見たことがあるかもしれません。

成金な人達のファッションは基本的に「いくら使ったか?」「どんな有名ブランドか?」という点に重きを置いています。

「試着もせずに○○分間で○○万円を使う」などというニュースもあったりと、反感を買ったとしても仕方のないことをなぜするのか?と疑問に思うかもしれませんが、これは一種の炎上商法の類いです。

ネオヒルズ族のような人々にしろ、芸能人にしろ、話題を作らなければ人々に忘れられてしまう。彼らのようにキャラクターを売ってビジネスを成立させている人達は、人に忘れられたら終わりです。

だから「5000万円のロールスロイスを一括で購入!」と同じように、大きい金額をファッションに使って話題を呼んでいるわけです。

そう考えると、こういった服装へのお金の掛け方に嫌悪感を覚えた人達が、そういう成金主義な人々を否定し、品格のある富裕層を支持したいという思いから「本当の金持ちは質素だ」と主張するのは当然のこととも言えますね。

そして改めて本当の富裕層のファッションを見ると、非常に控えめです。先ほどもキートンやブリオーニといったブランドを例に出して紹介した通り、彼らの服は高級品であっても、知らない人から見たらユニクロ等と同じです。それを見て、人々は思ったのですね。「ほら、本当の金持ちは服に金なんか使っていないんだ!成金め!」

かなり良いセンですが「ほら、本当の金持ちは品質にこだわって、長く着ることのできるベーシックな服をエレガントに着こなすんだ!成金め!」が正しい答えだったのです。

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このお二人は、先ほどマフラーの話に出てきたロロピアーナのCEOです。クルーザーや別荘を所持する大富豪ですが、仕事着とはいえ着こなしが大変控えめなのが分かるでしょう。

成金な人達のように奇抜なものを着るのではなく、目立つブランド品を身につけるのでもなく、エレガントでベーシックな着こなしです。

しかし着ているのは大変に上質なスーツです。おそらくは自社の最高級生地でイタリアのサルトリア(仕立て屋)で仕立てた注文服ですが、日本で買うとすればやはり50万円はくだらないのではないでしょうか。

お金持ちに学ぶ、本物のお洒落とは?

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いかがでしたでしょうか。今回は富裕層が着ているものについて、ファッション専門のライターが解説してみました。多くの媒体で「お金持ちは質素で、服装にお金を掛けない」というように書かれてますので、こちらは興味深い内容になったかと思います。

ファッションに馴染んだ人でない限りは、彼らが着ている服の正体を判別することはできません。イギリスのジェントルマン達が実践する「誰にも気づかれないように、最高品質のものを着なさい」という究極のエレガンスを知っているからです。

富裕層が何を着ているかなんて、我々にとっては縁の無い話だって?そんなことはありません。彼らの服選びからは学べることが非常にたくさんあります。

一番大事なのは、品質の良いものをエレガントに着こなすということです。自然な上質な素材を使ったスーツやジャケット、シャツなどをルールを知って着こなしているうちに、人の着こなしはどんどん洗練されていきます。

「俺、これを着ているんだぜ」と言いふらすのはもちろんのこと、「服こだわっているんだぜ」というのも言わないのが鉄則。

まるきり何も気にしていないかのように、当たり前かのように上質なものをセンス良く着こなす。これが彼らに学ぶ、お洒落の哲学です。

是非皆さんも、実践してみてくださいね。