ポータブルオーディオ入門2-カスタムIEMのススメ

皆様、ご機嫌いかがでしょうか。なんちゃってライターの橘です。

さて、本日は前回の記事でも少しだけ触れましたカスタムIEM(In Ear Monitor)、所謂「イヤモニ」についてご紹介したします。

【前回の記事】ポータブルオーディオ入門&おすすめ機種比較

イヤモニとは何ぞや

その前に「ところでイヤモニって何なの?初めて聞いたんだけど」という方もいらっしゃるかもしれませんね。
ミュージシャンがこんなのを耳に入れて演奏したり歌ったりしているのを見かけた事がありませんでしょうか。

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(画像はeイヤホン様の記事より)

彼らの耳に入っているのが正にイヤモニです。

イヤモニとは、結論から申し上げれば「自分の耳穴の形にピッタリとフィットするオーダーメイドのイヤホン」です。以上。

では身も蓋もないので、イヤモニについての簡単な歴史的背景、使用上のメリット、実際のオーダー方法等についてご紹介して参ります。

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イヤホン?イヤモニ?名称に見るイヤモニの歴史的背景

そもそも、何故音楽を聴くイヤホンやヘッドホンの仲間なのに「イヤモニ = イヤーモニター」なんていう名前が付いているのでしょうか。
その理由はイヤモニ誕生の歴史的背景にあります。

イヤモニは最初、ステージ上で演奏し歌うミュージシャンのために作られました。
何のために作られたのか。
その名のとおり「モニター = 監視」するためです。何を監視するのか。
「自分達の演奏や歌」を監視するのです。

ご存じない方もいらっしゃるかもしれませんが、ステージ上は観客席とは違い、様々な音が爆音で無秩序に入り乱れる「極めて劣悪な音響環境」です。
例えばロックバンドのボーカリストを例に取りますと、四方八方から鳴り響くエレキギターやベース、シンセ、ドラムの爆音で、普通では自分の歌っている声など一つも聴こえません。
しかし自分の歌声が聴こえなければ音程を取ることもままなりません。
従って、自分の声を「モニター = 監視」する機器が必要になります。

一昔前、まだイヤモニなるものが誕生していない頃、ロックバンドのボーカリストはどの様にして「自分の歌声をモニター」していたのでしょうか。
その答えは「ステージ上、自分のマイクスタンドの足元に、客席側ではなく自分側に向けたスピーカーを設置し、そのスピーカーから自分の歌声を鳴らして聴くという方法によって」です。
この「自分側に向けたスピーカー」を「モニタースピーカー」と言います。

モニタースピーカーを設置し、そこからステージ上の大爆音に負けない音量で自分の歌声を自分に向けて流して聴くことでボーカリストはしっかりと歌う事ができます。
しかし2つの大きな問題があります。

1つ目の問題は「モニタースピーカーの前から離れた途端に自分の歌声は聴こえなくなり、まともに歌えなくなる」ことです。
昔のライブ映像等でよく見られる光景が「ギターソロが始まるとボーカリストがステージ上を走り回って観客を煽ったりサービスしたり。で、ギターソロが終わるギリギリに滑りこむ様にマイクスタンドの前、つまりはモニタースピーカーの前に戻り、再び歌い始める」というものです。うーん、大変ですね!

2つ目の問題ですが、これは笑い事ではありません。
ただでさえ大爆音のステージ上。
そこで更にその大爆音に負けない音量で自分の歌声を足元のモニタースピーカーからモニターし続ける事で耳に大きな負担がかかり難聴等の症状を引き起こすのです。

この2つの問題はボーカリストに限った話ではありません。
ギタリストもベーシストもドラマーもキーボーディストも、皆「自分の演奏している音が聴こえない」状態ではまともな演奏など出来ません。
ので、各人の足元にはそれぞれモニタースピーカーが設置されます。ですので皆、基本的には「自分の音を聴くためのモニタースピーカーの前からは動けず」「ステージ上の大爆音+自分のモニタースピーカーからの大音量に耳を晒しながら」演奏を行っていたのです。

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演奏者を2つの問題点から開放したイヤモニ

冒頭でも申し上げました様に、イヤモニとは「自分の耳穴の形にピッタリとフィットするオーダーメイドのイヤホン」です。イヤモニの誕生によってステージ上のミュージシャンは前章の2つの問題から開放されました。

1つ目の開放は「足元に固定されていたスピーカーでは無くイヤホンで自分の音をモニターすることで自由に動けるようになった」という事です。
イヤホンでモニターしているのですから、何処をどう動き回ってもしっかりと自分の歌声や演奏をモニターできる訳です。

2つ目の開放は「自分の耳穴にフィットしたイヤホンを使う事で遮音性が高まり大音量で自身の音を流す必要が無くなり、耳への負担が大幅に減った」ことです。

つまり、従前はステージ固定されていたモニタースピーカーを「自分の耳穴形状にピッタリと合うようにカスタム(=Custom)し、耳の中(= In Ear)にモニター(Monitor)を持ってくる」事で、その問題点が解決されたのです。これが「イヤモニ =Custom In Ear Monitor」の名称の由来です。

イヤモニの「自分の耳にピッタリとフィットした」形状というのは、換言すれば「装着した際、自分の耳にほぼ隙間なくフタをする」という事になります。
想像してみてください。耳穴の複雑な形状にまるでパズルのピースがハマるようにイヤホンが収まる状況を。
ほぼ隙間なく耳にフタをしている状態になりますので極めて高い遮音性を獲得することになり、周囲の騒音レベルは一気に小さくなります。

ポータブルオーディオでの音楽鑑賞時、家ではなく外出先での鑑賞が多くなります。電車の中、街中の喫茶店等々。
前述したステージ上ほどではないにしろ、やはり様々な騒音が渦巻き、当然「音楽鑑賞の場として素晴らしい環境」とは言えません。
そういった環境においてもイヤモニならば高い遮音性により周囲の騒音を低減し、必要以上にボリュームを上げることなく気持ち良く音楽鑑賞を楽しむことができるのです。

音楽鑑賞時におけるイヤモニ使用のメリット

イヤモニ使用の最大のメリットは「そのサウンドの素晴らしさ!」…と書きたい所ではありますが、個人的には「違う違う。そうじゃない」と感じています。
最大のメリットは前述いたしました「遮音性の良さ」だと思います。
繰り返しになってしまいますが、外部の騒音を大幅にカットする事で、必要以上に音量を上げずとも音楽を気持ち良く楽しむことができる。これこそが最大のメリットだと思います。聴力は失われると回復しません(参考:「永井千佳の音楽ブログ」 )。音楽をこれからもずっと気持ち良く楽しむために、耳は大切にしたいものです。

また「身体に優しい」という点もイヤモニ使用の大きなメリットです。
どう優しいのか?具体的にはイヤモニはイヤーチップを用いず、シェルの内側全体が耳にフィットします。
イヤーチップはその柔らかさ故に基本的に誰の耳穴形状にもフィットしますが、耳に触れている面積はイヤモニの「シェルの内側全体でフィットする」に比べると小さくなります。この状況を比較しますと

・イヤーチップを用いた普通のイヤホン⇒耳の内側の少ない面積でイヤホンを支えて使用する

・イヤモニ⇒耳の内側全体でイヤホンを支えて使用する

という違いになります。身体的負担はイヤモニの「耳全体で支える」方がずっと少なくなります。この身体的負担の少なさが「長時間装用で疲れない」という使い心地に繋がります。

前回の記事で触れました、私が愛用しておりますユニバーサルイヤホンであるER-4Sに備えられている「三段キノコ」と呼ばれるイヤーチップ。これの遮音性は実はイヤモニのそれを上回ります。

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http://www.h-navi.net/er4s.php

3つのヒダが耳穴にフィットする事で、もう殆ど無音といって良いレベルで遮音されます。が、長時間装用していますと正直疲れるんです。
耳穴も痛くなってきたりします。ですが自分の耳穴形状にピッタリと合うように作られているイヤモニならば、そういった疲れも痛みもありません。
結果、長時間快適に音楽を楽しむことができるのです。

イヤモニのサウンドについて

一部の例外はありますが、基本的にイヤモニに搭載されるドライバ(音を発生させる装置)はBA(バランスド・アーマチュア)型ドライバと呼ばれるものです。
BAの構造等をここで取り上げますと、これまたとんでもない文字数になってしまいますので割愛いたしますが、そのメリットは「小型化が容易」「感度が高い」「中高音域の解像度が高い」といったものです。
デメリットとしては「再生可能周波数帯域が狭い」「低域の再生が苦手。故に力強さに欠ける」といったものです。
メリットを活かしデメリットを克服する為、近年のイヤモニは複数のBAドライバを搭載した製品が多くなっています。
具体的には「低域と高域の各々に対応するドライバを搭載し、再生可能周波数帯域の狭さをカバーする」といったものです。
低域の弱さについては、前述のER-4S等も同様ですがカナル型(耳栓型)の製品とする事で耳との密着度を上げてカバーする形になっています。

ここで誤解していただきたくないのですが「じゃあ、シングルドライバのイヤホンやイヤモニはダメなんだね」という事では全くありません。
むしろ逆です。シングルドライバを徹底的にチューニングし全域をカバーするドライバこそが理想だと個人的には考えています。

何故そう考えるのか。答えはいたってシンプルです。
「シングルドライバで全域をカバーできればネットワーク(音を周波数によって分割する回路)が不要になり、低域から高域までの繋がりがスムーズで自然なサウンドが実現できる」からです。
実際、前述のER-4Sはシングルドライバで素晴らしい音を鳴らします。ですが上述したデメリットにもありますように「力強さに欠ける」のも事実。
そのデメリットを克服するために前述いたしました様に複数ドライバを搭載する製品が増えており、昨今のスタンダードとなっています。

イヤモニの「試聴」について

前回の記事で「イヤホンは色々と試聴しまくってください」という趣旨の文章を書きました。イヤモニも同様です!と申し上げたいところなのですが、これがそうもいきません。何故ならイヤモニ本来の音とは「あなたの耳にピッタリとフィットした状態で鳴らされる音」であるため、実際に完成したものを聴く以外には、そのイヤモニが本来鳴らしてくれる音を聴く手立てが無いのです。

eイヤホン等の専門店には各イヤモニの試聴器も用意されています。通常のイヤホン形状でイヤーチップを介して装着するものです。試聴する事でその機種の「大体のサウンドの傾向」を知ることは出来ますが、それでも本質的には意味を為しません。

のでイヤモニ購入にはある種の「博打感」が必ず伴います。この博打の勝率を少しでも上げるには「とにかく試聴しまくって経験値を上げ、大体の傾向から本来のサウンドを推し量る能力を磨く」「自分と好みの方向性が近いレビュアーのレビューを参考にする」といった事が必要になってきます。

本当に「ご参考までに」ですが、私が参考にしているレビューサイトをご紹介しておきます。

BARKS  Custom IEM Channel

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http://www.barks.jp/keywords/custom_iem.html

イヤモニのオーダー方法について

少し前まで、イヤモニを購入するにはメーカーに直接注文、しかも殆どは海外メーカーであるために基本的に英語でのやりとりが必要という少々ハードルの高いものでしたが、近年では国内メーカーも増え、またイヤホン専門店や家電量販店でもオーダーを行うことができるようになり、そのハードルはグッと下がり簡単に注文できるようになっています。

イヤモニオーダーの基本的な流れは

1.購入するイヤモニを選ぶ

2.インプレッション(自分の耳型)を専門店で採取する

3.インプレッションをメーカーに送付する

4.メーカーにて送付されたインプレッションを元にイヤモニを製作する

5.完成後、納品

という形になります。

上記の1~3の工程を我々ユーザーが行う必要がありますが、上述しましたように今は専門店や家電量販店にて1ストップでこの工程を完結させることができます。

例えばeイヤホン秋葉原店 カスタムIEM専門店では様々なメーカーのイヤモニを取り扱っています。

http://www.e-earphone.jp/shop-ciem

またビックカメラでは国内メーカー カナルワークスのイヤモニをオーダー可能です。

http://www.barks.jp/news/?id=1000113346

この様に、身近な店舗でイヤモニをオーダーできるようになり一般ユーザーへの浸透が進んでいくと思います。そして多くの人がイヤモニの良さを知ることで更に多くの人に広がっていってほしいですね。

筆者使用イヤモニのご紹介

筆者は現在、2つのイヤモニを愛用しています。

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1つ目はUltimet EarsのReference Monitor。通称”UERM”です。

http://pro.ultimateears.com/products/custom-monitors/for-studio/ue-reference-monitors

このイヤモニのドライバ構成は低域、中域、高域にそれぞれ1ドライバを配した「3ウェイ3ドライバ」となります。

片側10ドライバといったド級機種も存在する中、3ドライバというのは今ではスペックとしては少々見劣りしますね。ですが、このUERMのサウンドは未だに多くの音楽好きの耳を捉えて離さないバランスです。

このUERMというモデルはハリウッドのレコーディングスタジオであるキャピトル・スタジオの監修により製作されたイヤモニで、そのサウンドは「レコーディング時のモニター用途。つまりは余計な装飾の無い極めてフラットなトーンバランス」を実現するものです。
以前にも書かせていただきましたが、フラットなトーンバランスは私の大好物です。ユニバーサルイヤホンとしてのER-4Sを愛して止まない私ですが、UERMは「遂に巡り会えたER-4Sの完全なる上位互換機種」でした。
例えば今使用しているUERMが壊れてしまい修理不可能ならば、すぐに新しいUERMを注文します。それくらいに惚れ込んでいる機種です。

サウンドの傾向は上述のとおり「全域に亘って見事なまでのフラット」というものです。ER-4Sとは異なり、各帯域に対応したドライバが3基搭載されているため、全体の音圧や解像度はER-4Sのそれを大きく上回ります。
これがER-4Sの上位互換と感じる所以です。

また3ドライバによる余裕は特に中高域において顕著で、全体としてのバランスはフラットですが中高域のヌケの良さは特筆モノです。その名のとおり「リファレンス(=参考)となるモニターサウンド」ではありますが、この中高域のヌケの良さにより、非常に爽やかな聴き心地となっています。

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2つ目は1964EARSのV6Stageです。

https://www.1964ears.com/product/1964-V6-Stage-Custom-In-Ear-Monitor

1つ目でご紹介したUERMと同じく3ウェイ構成ですが、このモデルは各帯域にタンデム(2基ずつ)でドライバを配した「3ウェイ6ドライバ」構成となります。

UERMがその完全フラットなトーンバランスにより「虫眼鏡的に音楽を聴きこむ」のに適しているのに対し、V6Stageは僅かに低域を持ち上げたトーンバランスと各帯域2基のドライバによる余裕をもった再生音により「より”音楽的なサウンド”で楽しむ」のに適したイヤモニとなっています。とはいえV6Stageの解像度の高さも相当のもので、個人的にはモニター用途としても十分機能すると感じています。

上述しましたように、V6Stageのサウンド傾向は「全域フラットから僅かに低域を持ち上げたもの」で、換言すれば「多くの人が『良い音』と感じやすい」トーンバランスです。マルチドライバによる余裕の有る中高域再生に締まっていながら量感十分の低域。ユニバーサルイヤホンからステップアップしての最初のイヤモニとしてもお薦めです。まあ、ステップアップと言っても「いったい何段ステップアップしたんだろう?」という位にド派手な音質向上を体感できますことは保証しますよ!

以上、本日はイヤモニ=カスタムIEMについて簡単にご紹介いたしました。

是非、皆様にも「自分の耳型にぴったりとフィットする高音質イヤモニ」をご体験いただきたいと思います。

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