【薬コラム連載】子供も感染しやすい”どびひ”の対処方法

薬剤師ライター たんぽぽむし 過去の記事はこちら

小児医療に携わって15年。主に薬関係・自然育児について執筆していきます。美味しいもの、きれい&かわいいもの、からだにやさしいもの、そして子供たちの笑顔に触れたとき幸せを感じます。


こんにちは。ライターたんぽぽむしです。
みなさんお変わりありませんか?

夏になると耳元でブ~ンと飛ぶあの音を聞くだけで少し不快な気分になってしまう私から、今回は「とびひ」のお話です。

一般的には「とびひ」と呼ばれていますが、正式名称は「伝染性膿痂疹」と言います。夏の時期に子供に多く見られ、水膨れをかき破ることで、ばい菌が火事の飛び火のようにあちこちに飛び移ってしまう皮膚の病気です。接触することでうつります。大人がかかるものもあるので、一度その原因や対処の仕方について整理してみたいと思います。

とびひの種類

「水膨れになるもの」と「かさぶたになるもの」の2種類あります。

・水疱性膿痂疹

〈原因菌〉黄色ブドウ球菌
健康な人の皮膚の表面や鼻の中などにいる菌(常在菌)です。虫刺されやあせも、湿疹などを掻いたり、転んだりしてできた皮膚表面の傷口から菌が中に入り込み、その菌が増えるときに出す毒素によって発症します。
鼻の入り口にも多く存在するので、頻繁に手で鼻をほじると鼻の周りから広がることもあります。

〈症状〉
掻き壊したところの周りに大豆からクルミくらいの大きさの薄い水膨れができ、その周りが赤くなります。
水膨れの中は、最初は透明ですが、次第に膿が溜まります(膿は細菌と闘った白血球の死骸です)。
水膨れは破れやすくめくれてただれ(「びらん」と言う)、我慢できずに掻いたその手で他の部位を触ることで、さらに身体のあちこちに広がってゆきます。

〈できやすいところ〉
鼻や口のまわりから症状が出始めることが多いです。
全身に広がることもあります。

〈かかりやすい季節〉
夏。
最近は暖房の関係で年中かかることがあります。

〈かかりやすい年齢〉
7歳未満の乳幼児。
ただ、稀に大人でもかかります。特に高齢者やアトピー性皮膚炎の人は皮膚が傷つきやすく、バリア機能が衰えているため注意が必要です。

・痂皮性膿痂疹

〈原因菌〉化膿レンサ球菌(A群β溶血性連鎖球菌:溶連菌とも言います)
健康な人の鼻の中やのどなどにいる菌(常在菌)です。
傷口などから皮膚の中に入り込みます。
水疱性膿痂疹の原因菌である黄色ブドウ球菌も同時に感染している場合があります。

〈症状〉
膿を持った水膨れ(膿疱)ができ、それが厚いかさぶたになります。
炎症が強く、リンパ節が腫れたり、熱が出たり、のどが痛くなったりすることもあります。

〈できやすいところ〉
全身

〈かかりやすい季節〉
特になし。年中かかります。

〈かかりやすい年齢〉
特になし。子どもも大人もかかります。

とびひの治療

どちらのとびひも抗生剤の飲み薬と塗り薬で治療します。
(水疱性膿痂疹で軽めの場合は、塗り薬だけの場合もあります)

・飲み薬

<抗生剤> セフェム系、ペニシリン系、ホスホマイシン系など。
商品名:フロモックス、メイアクト、サワシリン、ホスミシンなど。
<かゆみ止め> 抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬
商品名:タベジール、アレロック、アレグラなど。

その名の通り、全身あちこちに飛ぶので、塗り薬だけではなく飲み薬による全身治療が有効です。
処方された抗生剤は、途中で止めずに最後までしっかり飲み切りましょう。
抗生剤を飲み続けると、腸内の菌のバランスが乱れて下痢や軟便になることがありますが、1日5~6回以上、またはおむつや下着から漏れるほどのひどい下痢や腹痛などで困ることがなければ、継続して飲みきることをお勧めします。
抗生剤を飲んだりやめたりすると、感染した菌よりも強く抗生剤が効きにくい菌(耐性菌)が増えてしまう可能性があるためよくないです。
もし、耐えられないほどの下痢や腹痛の場合は、自己判断で中止せず、処方医に相談して指示を仰いでください。
かゆみ止めの飲み薬は処方されない場合もあるので、痒みが強い場合には、診察時に医師に相談するとよいでしょう。

・塗り薬

<抗生剤> 商品名:フシジンレオ軟膏、アクアチム軟膏、エリスロマイシン軟膏など

石鹸で手を洗ってから、指で薬を塗ります。
塗り薬のチューブを直接患部に当ててチューっと出してはいけません。
「綿棒で塗った方がよいか?」と聞かれることがありますが、綿棒は指よりも先がとがっていて患部を刺激する可能性があるので、指で塗ればよいと思います。
大人の場合は、薬を塗った後すぐに石鹸で手を洗えば、とびひがうつることはまずありません。
ただ、とびひが身体の数か所に広がっている場合は、原因菌が必ずしも同じかどうかわからないので、症状が軽いところを先に塗るか、塗る部位により指を変えるとよいでしょう。
綿棒を使う場合は、患部をつつかないため棒を横向きにしてなでるように、また部位により別の綿棒を使うよう心掛けましょう。

そして薬を塗ったら、通気性のよいガーゼなどで覆いテープで止めます。
ガーゼは1日1回、入浴後に取り換えましょう。
(患部には直接薬を塗らず、ガーゼに薬を塗っておいて覆う方法もあります)
ガーゼで覆う目的は、自分で触ってしまわないため、また他の部位や他の人にうつさないためなので、症状が軽いときには必要ありません。
また、絆創膏は患部が密閉されてかえってばい菌を増やしてしまうのでやめてください。当然のことながらキズパワーパッドもいけません。
(キズパワーパッドは細菌感染のないやけどや傷には大変有効です。)

とびひの原因菌によってかかる病気

とびひの原因となる細菌により、稀に他の病気にかかることがあるので注意が必要です。
まずは、処方された抗生剤をしっかり飲みきること、そして、とびひの後に以下のような症状が現れた場合は、直ちに受診して適切な処置を受けましょう。

・ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)

主に水疱性膿痂疹の原因となる黄色ブドウ球菌が出す毒素が血液に入り込み、全身に広がる病気です。
目、鼻、口の周りや首、脇、太ももの付け根などの赤みから始まり、やけどのように全身の皮膚が赤く腫れて痛みが出て、水膨れが現れ、やがて表面からめくれてきます。熱や寒気、だるさなどの症状もあります。
治療は抗生剤の飲み薬か点滴で行いますが、小さい子どもの場合は重症になりやすいため、大半は入院して治療します。
特に9~11月ごろに多い病気ですが年中見られます。

・リウマチ熱

主に痂皮性膿痂疹の原因となる溶連菌感染後、2~3週間して起こる病気です。
関節が腫れて痛くなり、心臓の炎症による動悸、胸の痛み、倦怠感、息切れがしたり、輪状の紅斑や小さなしこりが起きることもあります。

・腎炎

これも主に痂皮性膿痂疹の原因となる溶連菌感染後、2~3週間して腎臓に炎症の起こる病気です。
血尿、タンパク尿、むくみなどが現れるため、尿検査をすればわかります。

とびひのときの生活上の注意

・患部は泡立てた石鹸でよく洗い、石鹸を残さないようしっかり流しましょう。
症状がひどいと洗うこと自体をためらわれるかもしれませんが、患部を清潔にするため、また患部に付いたばい菌を物理的に取り除くため、洗うことは重要です。傷になるほどに力を入れてゴシゴシこすらなければ問題はありません。
毎日きれいに洗ってください。

・湯船につかるよりもシャワーが良いです。

家族に移さないためには最後に入浴するのがよいですが、お風呂のお湯というのは案外汚れているため、症状がひどい間は湯船にはつからず、シャワーだけにするのが良いと思います。

・家族と一緒に入浴することはもちろんですが、タオルなども同じものを使わないよう気を付けましょう。

使ったタオルはすぐに洗剤で洗ってしっかり乾かせばまず問題ありません。洗ったタオルは天日干しにすればなお良いですが、最も安全な方法として、患部だけはタオルで拭かずにティッシュなどを使用し廃棄することをお勧めします。

とびひのときの集団生活

・学校保健安全法という法律で「学校感染症 第三種(その他の感染症)」として扱われます。他の子どもにうつす可能性があるため、基本的には、医師に診てもらい、治療をして、患部をガーゼや包帯などできちんと覆っていれば、登園や登校の許可がもらえます。
日本臨床皮膚科医会、日本小児皮膚科学会、日本皮膚科学会、日本小児感染症学会が出席停止期間に関して、以下のように統一見解を出しています。

伝染性膿痂疹(とびひ)に関する統一見解
「水ぶくれや糜爛(びらん)からの浸出液を触ったり、引っ搔いたりすると、中の細菌で次々にうつります。特に鼻の入り口には原因の細菌が沢山いるので鼻をいじらないようにしましょう。病変が広範囲の場合や全身症状のある場合は学校を休んでの治療を必要とすることがありますが、病変部を外用処置して、きちんと覆ってあれば、学校を休む必要はありません。」

・プールに入ると、症状が悪化したり、他の人にうつす可能性もあるため、完全に治るまではやめましょう。
こちらについても、日本臨床皮膚科医会、日本小児皮膚科学会が共同で統一見解を出しています。

伝染性膿痂疹(とびひ)の「プールに入っていいか悪いかに対する統一見解
「かきむしったところの浸出液、水疱内容などで次々にうつります。プールの水ではうつりませんが、触れることで症状を悪化させたり、ほかの人にうつす恐れがありますので、プールや水泳は治るまで禁止して下さい。」

とびひにならないために

・日頃から皮膚を清潔にすることが大事です。

・皮膚に掻き傷を作らないよう、爪は短く切っておきましょう。

・アトピー性皮膚炎の人は、なるべく搔きむしらないよう、夏場は特に洗浄と保湿など日頃のケアを丁寧に行いましょう。
(洗うだけで保湿をしないと、皮膚の表面から水分が飛ぶときに痒みが出やすくなります。)

・子どもは特に鼻をほじって傷になり、鼻の周りからとびひが広がることがあります。なるべく鼻に手を入れさせないよう、鼻詰まりなどの症状がある場合はそちらも早めに対処するよう心掛けましょう。

今回は夏によくみられる皮膚の病気「とびひ」についてまとめてみました。
とびひに限らず、ばい菌が感染して炎症を起こす皮膚の病の場合、共通して大事なことは「泡立てた石鹸で洗うこと」です。
いろいろな香料で匂いが付けてあったり、何か特別な成分が入っているとうたわれているものよりも、シンプルな白い固形石鹸が一番です。
そしてナイロンなど合成繊維のタオルではなく、あくまでも手で洗うこと。
手がいちばん優しくて、力加減も自分で調節できますから。
いちばん外側で身体を守ってくれている皮膚に目を向け、丁寧にケアすることは、自分のからだと心を守るために、とても大事な時間なのかもしれません。

薬剤師ライター たんぽぽむし 過去の記事はこちら

小児医療に携わって15年。主に薬関係・自然育児について執筆していきます。美味しいもの、きれい&かわいいもの、からだにやさしいもの、そして子供たちの笑顔に触れたとき幸せを感じます。


著者 おはし

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