【薬コラム連載】風邪などで熱が出た時の対処方法

薬剤師ライター たんぽぽむし 過去の記事はこちら

小児医療に携わって15年。主に薬関係・自然育児について執筆していきます。美味しいもの、きれい&かわいいもの、からだにやさしいもの、そして子供たちの笑顔に触れたとき幸せを感じます。


薬剤師ライターのたんぽぽむしです。
いつも記事を読んでいただき、ありがとうございます。

みなさんは、自分や家族が熱を出したとき、解熱剤(熱さまし)を使いますか?

熱が出たときには早く平熱に下げた方が身体が楽になるし、子どもの場合は、熱のせいで頭がおかしくなっても困るから、解熱剤は使った方がよいと思いますか?
それとも、「熱は必要だから出ている」と言われるから、薬を使って無理に下げるべきではないと思いますか?

解熱剤の使用については、いろいろと言われることが多いですが、そもそもなぜ熱が出るのかを考えれば、使用すべきかどうか、自然とわかってくることと思います。
今回は、主に子どもの場合の解熱剤の使い方と、薬以外での対処の仕方について併せて紹介してゆきます。(もちろん大人の方に当てはまることも多いですよ)

ちなみに私は、歯の痛みがあまりにもひどいときに鎮痛剤を1回飲んだだけで、解熱目的で薬を使ったことはありません。
20歳になる息子も、解熱鎮痛剤の使用は生まれてから2回だけ。
1回目は親知らずを抜いて入院したとき、「痛みがひどくなって辛いのを我慢するするより先に」と医師から勧められて。もう1回はつい数か月前、大学入試の1日目終了時、突然耳下腺が腫れて痛みが出たので、2日目の試験に集中するため必要に駆られて。どちらも痛み止めとして飲んだので、熱さましとして使ったことはないということですね。小さいときには何度も熱を出しましたが、いつも薬以外の方法を試みてきました・・・。

なぜ熱が出るのか?

一般的な風邪などの感染症について熱が出る過程を考えてみましょう。

まず、細菌やウィルスなどの病原体がのどから入ってくる。

マクロファージと言われる局所免疫担当細胞が、病原体を捕獲する。

マクロファージからサイトカインと言われる発熱物質が出される。

脳の体温中枢が「39~40度くらいまで体温を上げろ」と指令を出す。
体温が高いと細菌やウィルスの増殖速度は下がり、細菌やウィルスをやっつける白血球の働きは活発になる。

体温を上げるため、血管は収縮して皮膚から熱が放散されないようにし、筋肉は震えて熱を作り出す。
(手足は冷たく、顔は蒼白く、身体はブルブル、ガタガタ震えてくる)

熱が上がると、血管は拡張し血流が上がり、汗が出て皮膚から熱が放散されるため、これ以上熱は上がらなくなる。

つまり、
身体からの指令により熱が高くなっている場合は、熱によって脳がおかしくなることはなく、41℃未満の熱ならば心配しなくてよいということです。

また逆を考えると、
解熱剤を使い、脳の指令に反して熱を下げるということは、ばい菌が勢力を盛り返し、逆にばい菌をやっつける白血球の働きは活発になりにくくなる。
つまり、風邪の治りが遅くなる可能性があるということです。
また、熱が高いほど病気が重いということでは決してありませんので、熱が高いと言って怯える必要はないのです。
それならば
熱が高くても心配はないのか?

通常の感染症で、体温維持機構が働いている場合は心配がありませんが、実際には41℃以上に熱が上がることもあります。
「熱射病」「脳炎」「脳症」「細菌性髄膜炎」などがそれに当たります。
これらの病気では、脳の体温中枢機能が侵されているため高熱になることがあり、たとえ命が助かっても、脳に後遺症が残ることが考えられます。
これは、熱が高くて脳がやられたのではなく、脳がやられているから高熱が出るのです。
だから熱が高くても心配ないのではなく、すぐに病院に行く必要があります。
さっきまで「熱が出ても大丈夫なんだ」と安心していた方も、これを読んだ途端にかえって心配になってしまったかもしれませんね。
ただ、そのような重い病気の場合は、高熱以外に、けいれんや嘔吐、意識障害、激しい頭痛などが起こっているはずです。明らかにいつもと様子が違うのでわかると思います。
ですから、「いつもと様子が違う」と感じたときには、解熱剤によって熱を下げるのではなく、受診する必要があるのです。
では、通常の風邪などの感染症の場合、

熱は高いままでよいのか?

さきほど、「熱が出るのは身体がばい菌をやっつけるため」と説明しました。
けれども、熱が続くと辛くてしっかり眠れなかったり、水分や食事も摂れないことがあると思います。
そんなときには、一時的に身体を休めるため、解熱剤を飲んでもよいと思います。
私は、薬とは別の方法で対処したので(方法は後述)、自分の子どもに解熱剤は飲ませませんでしたが、親子で辛くてたまらないのに、無理して薬を飲まずに頑張らなくてもよいのでは?というのが、今の私の考えです。

ある小児科医は、「体温が1度下がるくらいがちょうどよい」とおっしゃいました。身体が楽になり、かつ熱を上げようとする身体の目的にも反しないところが、「1度下げる」というところなのでしょう。

どんなとき、どのように解熱剤を使えばよいか?

解熱剤をよく使う方たちは、「熱さましを飲んだのに下がらない」とか「飲んだのにまた熱が上がってしまった」と言って、たびたび解熱剤をもらってゆきます。
元気に走り回っているような子供に、解熱剤を飲ませ続ける方もいます。
「熱が出ているのはよくないこと。心配だから早く下げてあげたい」と子どもを思う気持ちや、「37.5℃以上の熱があると保育園に預けられないから困る」という親の事情など、解熱剤を使いたい理由は様々だと思いますが、ここまで読んできた皆さんならわかると思います。
もう一度言いますが、体温の高さと病気の重さは必ずしも一致しません。
なぜ熱が出ているかを考えれば、平熱に下がるまで頻繁に解熱剤を使い続けることが適切な対応ではないことがわかると思います。
熱の原因となるばい菌がやっつけられない限りは、どれほど解熱剤を使っても平熱には下がりませんし、病気は治りません。
逆に、薬によって無理に熱を下げ、また熱が上がってと繰り返すことは、体力を消耗し疲れてきます。
目先の数字に惑わされて、元気な子供に解熱剤を使う必要は全くないのです。

解熱剤を使うのは、一時的に身体を休め、自力でばい菌をやっつけられる状態にするためです。
・とても辛そうでよく眠れないとき
・元気もなくて、水分や食事もほとんど摂れないとき
・赤ちゃんの場合は、抱っこしても力がなく、うなだれてしまうとき
・小さい子の場合は、部屋の中を歩いたり遊んだり、座ってテレビや絵本も見られないようなとき

そんなときには、まずは1回だけ使用してみてください。
使用量の目安は、体重1kgで10mgくらい。
10kgの子どもなら、コカールDS20% 0.5g/回 か、アンヒバ坐剤100mg 1個
20kgの子どもなら、カロナール錠200mg 1錠 か、アンヒバ坐剤200mg 2個

そして、少し楽になったなら、そのときに水分などを与えてください。

具合が悪いときには、塩分、糖分、ミネラルが入って身体に吸収されやすい“経口補水液”がお勧めです。普段はまずいと思う経口補水液も、具合の悪いときには割とおいしく飲めるはずです。(「まずい」と言わなかったら、今の身体には必要ということで、大人も同じです。)赤ちゃんの場合は、なにより母乳が一番です。
また、「栄養をつけさせなきゃ」と嫌がる子どもに無理やりいろいろ食べさせる必要はありません。子どもの身体は正直ですから、自然と欲しがるもので、なるべく消化の良い身体を冷やさないものを、少しずつ与えてください。理屈ではなく身体が欲するものが何か、感じてあげることが大事です。

そして、まだ辛そうなら、医師の指示どおりの間隔(6~8時間あける)を守って、もう1回解熱剤を使用してください。

使用の目安は「辛そうかどうか」ということなので、たとえ熱が高くても、割と元気な子どもに短い間隔で使わないこと。
それでも、全くよくなる兆しが見えないときや、どんどん悪くなるように見えるときには、受診を検討してもよいでしょう。

“風邪を治すには3日くらいは必要”と言いますが、6ケ月未満の赤ちゃんや、親から見ていつもと違うと感じるときには、3日を待たずに受診してください。
また、普段から子どもとよく接して様子をよく観察し、「何だかいつもと違う」ということがわかる状態にしておくとよいでしょう。
どんなに優秀なお医者さんよりも、毎日一緒に暮らしている家族の方が、「いつもと違う」と気付けることが多いです。

熱性痙攣を起こした子どもに対する解熱剤の使用についてはこちら。
薬コラム連載 熱性痙攣(ひきつけ)と薬の使用

すごく辛そうならば、38℃以下でも解熱剤を使ってもよいのか?

「解熱剤は辛そうな時に」と説明すると、「それなら38℃以下でもすごく辛そうなら解熱剤を使ってもよいですか?」と聞かれることがあります。
痛みが強いときや夜中に困ったときなど1回使っても構いませんが、翌日には受診した方がよいでしょう。
熱も高くないのに辛そうにしている原因がわからないし、解熱剤によって体温を下げ症状を抑えてしまうと、かえって病気を分かりにくくし対応が遅れることがあるからです。

どんな解熱剤を使えばよいか?

子どもにも大人にも副作用が少なく、最も安全な薬は一般名「アセトアミノフェン」です。
製品名で言うと、医療用の飲み薬・坐薬で、カロナール、コカール、アンヒバ、アルピニーなど。
市販薬では、タイレノールA、小児用バファリンチュアブルなど。
副作用の胃痛が起こりにくく、眠気もほとんど起きない薬です。
それ以外に使うとすれば、一般名「イブプロフェン」です。
解熱鎮痛剤のアスピリン、ポンタール、ボルタレン、総合感冒薬のPL顆粒、PA錠などは、15歳未満の小児がインフルエンザや水痘(水ぼうそう)の時に飲むと、脳症などを起こす危険性があり使用禁止です。
大人の方も副作用を起こす可能性があるため、お勧めではありません。

熱があるときには、水分を摂ったほうがよいのか?

結論から言うと、普段よりも多めに水分を摂ったほうがよいです。
その理由を考えるために、身体の中での水の働きについて考えてみましょう。

ヒトの身体は大人で6割前後、子どもでは7~8割が水でできています。
ですから、水分を10%失うと身体の機能に障害が出始め、20%失うとショック症状を起こし、場合により死を招くと言われています。

身体の中での水の働きは、大きく分けて3つ。
1、 汗をかくことで身体の表面から熱を奪い、体温を一定に保つ
2、 血液の主な成分は水なので、その血液を介して栄養素や酸素、ホルモンを体中に運び、栄養素の消化・吸収を助ける
3、 呼気、汗、尿、便などにより不要物(老廃物)を排泄し、体内の水分量を一定に保つ

ということは、熱が出て、汗をかき、いつもより身体の中の水分が不足してくると、血液の流れが悪くなるので栄養素や酸素、ホルモンが行き渡らなくなり、また老廃物も溜まるのでさらに身体の調子は悪くなるというわけです。

ですから、風邪をひいて熱があるときには、普段よりも少し多めに水を摂る必要があるのです。(ただやみくもに、たくさん摂ればよいというわけではないので、注意が必要です。)
一度に大量に摂っても吸収されにくいので、少量ずつ回数を多く摂ることをお勧めします。

先ほど「熱が出て辛すぎて水分も摂れないときには、1度解熱剤を使って身体を休めてもよい
とお伝えしたのは、これらの理由からです。

解熱剤以外の対処の仕方

では、熱が出たときには、薬以外でどんなことができるでしょうか。
実際に私も実践してきた、身体に優しい自然療法をご紹介します。

・キャベツ湿布
38℃くらいの熱の時。キャベツが熱を吸い出してくれる。

1. キャベツ、白菜など青菜の葉っぱをさっとゆで、水に取って冷やす。
2. ガーゼのハンカチの一辺を切って袋にし、中に青菜を広げて頭にのせる。小さい子は頭の下に敷いて寝かせる。
3. キャベツが熱でしなっとしたり、青臭い匂いがしてきたら、取り換える。

・豆腐湿布
38℃以上の高い熱の時。身体にこもった熱や老廃物を吸い出してくれる。

1. 豆腐1/2丁を軽く水切りしてつぶし、その1割くらいのおろし生姜と小麦粉(大匙2杯くらい)を入れて混ぜ、耳たぶくらいの固さにする。
2. 綿のシャツを切ったものやガーゼなどに薄くのばし、額に貼る。小さい子は頭の下に敷いて寝かせるか、額にのせて、バンダナや帽子などでずれないように固定する。
3. 豆腐がぬるくなってきたら、取り換える。

*ちなみに額に貼る市販の冷却シートは、ほとんど意味がありません。本人が希望するなら貼っても構いませんが、ひんやりするだけで熱は下げられません*

・マッサージ
植物オイルにラベンダーやカモマイルなどのエッセンシャルオイルを入れて、身体全体をマッサージする。
手のひらや足の平を手で揉む。触って硬さが残るところは特に念入りに揉み続けると、次第に硬さも取れ、気の流れが整い、内にこもった熱が発散される。

・梅醤番茶を飲む
梅干しを湯呑に入れてつぶし、純正醤油を少し入れてから、生姜汁と三年番茶を入れて混ぜる。
ちょこちょこと回数を多く飲ませる。
体も温まって、汗も出てきて、身体がすっきり楽になる。

今回は、熱が出たときの対処の仕方について、まとめてみました。

1917年に発行された羽仁もとこ編著『育児法』(婦人之友社)には、医学博士の加藤照麿氏により次のように書かれているそうです。
「子どもの体温は(略)平生でも大人より高いのであるが、特別に発熱した場合においても、大人より熱に耐える力が強い、高度の熱を出したなら、すぐに弱ってしまいそうであるが、組織の新しい回復力の高いものであるから、なかなかそうでない。母親の中には子供の熱の高くなるのを恐れるあまりに、医者から解熱剤などをもらっておいて、少し熱が出ると用いるようにする人もあるけれども、解熱剤は熱をいくらか下げるかわりに多くの障りをもつものであるからむしろ好ましくない。熱を少しでも下げたいという方にのみ熱心になって解熱剤をたびたび用いすぎるよりも、いっそ子どもはわりあいに熱に耐えやすいものだと考えている方がよいと思う」

大事なことは、体温(細かい数字)ではなく、子どもがどういう状態かをよく見ることであり、家族がやるべきことは、今出ている熱をないものにすることではなく、風邪などの病気を治すために、どんな手当をしてあげられるか考えること。
赤ちゃんや小さい子どもの場合は特に、家族が近くにいてくれるだけで、抱っこしたり、そっと汗を拭いてくれるだけで、気持ちも落ち着き、安心して眠れて、快方に向かうこともあるでしょう。

これまで当たり前のように使っていた解熱剤を止めたり使用頻度を減らしたりすることは勇気がいることかもしれませんが、使用する前に、もう一度子どもさんをよく見て、今使うべきかと考えていただけたら嬉しく思います。


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小児医療に携わって15年。主に薬関係・自然育児について執筆していきます。美味しいもの、きれい&かわいいもの、からだにやさしいもの、そして子供たちの笑顔に触れたとき幸せを感じます。

著者 おはし

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