【薬コラム連載】薬を間違えて飲ませてしまった時の対処方法 〜実例〜

【薬コラム連載】薬を間違えて飲ませてしまった時の対処方法

 

※続編になります。ここからは少し難しい内容になります。

それでは、実際に受けた問い合わせ内容について、大きく2つに分けて解説します。

1.自分の薬、または兄弟間での薬の飲み間違え について。

Case1) 兄弟の薬を間違えて飲んでしまったとき その1
咳や痰の薬 アスべリン・ムコダイン・ムコソルバン のとき。

20kgの姉
アスベリンDS 2% 1日2.5g
ムコダインDS 50% 1.2g
小児用ムコソルバンDS 1.5%  1.2g  1日3回 5日分

10kgの妹
アスベリンDS 2%  1日1.25g
ムコダインDS 50%   0.6g
小児用ムコソルバンDS 1.5% 0.6g  1日3回 5日分

もし、姉が妹の薬を間違えて飲んでしまった場合は、必要な量の半分しか飲まなかったということなので、皆さんの予想通り、効果は出ませんが、危険な状態にはなりませんね。

効かない不要物を体に入れてしまったので、害といえば害があります。薬が効き目を発揮するためには、必要な量があるのです。子どもさんが飲むのを嫌がって、処方された薬を全部飲みきれない場合も同じことです。
「ちょっと舐めたからちょっとは効くだろう」というものではありません。

では、妹が姉の薬を飲んでしまったら。これが皆さん焦る状況です。
お察しのように、1回に飲むべき量の2倍を飲んでいることになります。
薬の添付文書(メーカーによる説明書)には、使い方に「適宜増減」と書かれているものがありますが、その場合 通常 0.5~2倍が目安です。

また、今回は1日量の2倍を飲んだのではなく、1日3回飲むうちの1回を、2倍量で飲んだということです。
間違えて飲んだ薬の種類、子どもさんの年齢、生まれつきの病気の有無などによって、その危険度は変わってくると思いますが、0歳児の場合や、他に病気を持っている場合、そして、いつもと様子が違う場合は、直ちに病院に連絡して受診してください。

幼稚園児や小学生で、持病もなくて、見たところ変わった様子が見られなければ、落ち着いて医療機関に連絡してください。
比較的副作用の出にくい、適宜増減されることもある薬の場合は、「次に飲むのを1回やめて様子を見て、問題がなさそうなら、その後からは処方通りに続ける」くらいの、電話での指示のみで済むこともあるでしょう。

もちろん、間違えて飲んでしまったときには、自己判断はいけません。気づいたらすぐに医療機関に連絡してくださいね。

同じ薬を2袋飲ませてしまった場合も、上記と同じ、2倍量の服用になります。
case1は、使用量が体重で決められているが適宜増減できる薬で、比較的安全性の高い場合の考え方です。

Case2) 兄弟の薬を間違えて飲んでしまったとき その2
アレルギー性鼻炎や気管支喘息などで処方される オノン(一般名 プランルカスト)の場合
14kgの兄 オノンDS 10% 1日0.98g
10kgの弟 オノンDS10%  1日0.7g

弟が兄の薬を飲んでしまった場合は1.4倍量になりますから、心配だと思いますよね。
もちろん0.98gでは、今回の医師の処方量とは違います。
けれども、この薬は、「10kgの場合 通常量0.7g  最大1.0gまで増量できる
と決められているので、症状によっては、弟に1.0gが処方されることもあるということです。
同じように使用量が決められる薬としては

抗生剤    : フロモックス小児用細粒  0.09g/kg/日(0.18g/kgまで増量可)
解熱鎮痛剤 : カロナール細粒20% 0.05g~0.075g/kg/回 (この薬は%濃度がいろいろあるので注意)
などがあります。

Case2のように使用量に幅がある薬の場合は、間違えてしまっても心配が少ないこともあるのです。

Case3) 兄弟の薬を間違えて飲んでしまったとき その3

アレルギー性鼻炎や皮膚のかゆみに処方される アレグラ(一般名 フェキソフェナジン) の場合

5歳の姉       アレグラDS5%  1日1.2g
1歳11ケ月の妹  アレグラDS5%   1日0.6g

この薬は 「6ケ月以上2歳未満で1日0.6g、2歳以上7歳未満で1日1.2g」と定められています。
ですから、もうすぐ2歳になる妹が姉の薬を飲んでしまっても、妹の体が特別小さいわけでなければ、心配は少ないですね。
同じように年齢で使用量が決められる薬としては

鼻炎や皮膚炎の薬 : アレロック顆粒 2歳以上7歳未満 1日1g、7歳以上の小児 1日2g
鼻炎や喘息の薬   : キプレス 1歳以上6歳未満 1日 細粒4mg、6歳以上の小児 1日チュアブル5mg
などがあります。

case3は、年齢により量が決められている薬の場合です。

Case4) 1日3回のシロップ 5日分を、1度に全部飲んでしまったとき。

15回に分けて飲むはずのシロップを1回で飲んでしまったのですから、15倍の服用です。
先ほど説明した薬の説明書での「適宜増減」は、 通常 0.5~2倍が目安です。
どう考えても、15倍は多すぎです。

けれども、子どもが一人で飲んだ場合は、一部またはほとんど全部こぼれてしまっている場合もありますから、まずは慌てず、周りの状況を確認してください。
そして、やっぱりそれなりの量を飲んでしまった可能性がある場合は、
直ちに病院に連絡して受診してください。
容器に残っている薬がある場合は、それも持参すること。

Case5) 兄弟の薬を間違えて飲んでしまったとき その4

薬の種類によっては、兄弟に処方された薬を飲んだ場合や間違えて2包以上飲んでしまった場合、危険な状態に陥ることがあります。
例えば、
咳が出ているときに処方される ホクナリン(一般名 ツロブテロール)、メプチン(一般名 プロカテロール) は、多く飲むと、動悸や興奮、手の震え、嘔吐などの副作用が出やすく、鼻水や皮膚のかゆみに処方される タベジール(一般名 フマル酸クレマスチン) は、多く飲むと、痙攣をおこしやすくなる危険性があります。

また、喘息や気管支炎の治療薬 テオドール(一般名 テオフィリン) は、2歳未満の子供が熱のある時に飲むと痙攣をおこしやすくなり、また、小さい子供では特に、薬の効き目がなくなるまでの時間が、大人に比べて変わりやすいため、血液中の薬の濃度を測るなど、普段から慎重な対応が必要と言われることもある薬です。

また、てんかんの治療薬 アレビアチン(一般名 フェニトイン)、テグレトール(一般名 カルバマゼピン)なども、テオドールと同様、効き目が出る量から少し量が増えただけで、急に副作用が出やすくなるので、どれくらい飲ませればよいか、医師でも量の調節に注意が必要な薬です。

ですから、このような薬が処方されたときには、まず、間違えないように飲ませる必要がありますが、万が一、間違えてしまった場合には、直ちに病院に連絡することをお勧めします。

(念のため伝えておきますが、case5に挙げた薬も、処方された子どもが指示を守って飲む場合は問題ありません。特別に危険な薬というわけではないので、誤解しないようにしてくださいね。)

Case6) 薬を飲み間違えてしまったようだが、いつ間違えたかわからないとき

Case5にあるような特に注意が必要な薬でなく、これまでにも飲んだことがある薬ならば、いつ飲み間違えたかわからない場合も、念のため次の1回または、その日1日飲むのをやめれば、問題ない場合が多いと思われます。

それは、一部の薬を除いて、1日以上経てば、薬がだんだん効き目を失い、危険な状態ではなくなっていることが多いからです。
もし、とても危険な状態であったら、飲み間違えたときからそれほど時間をあけずに、様子が違うことに気づくと思います。

いつ、飲み間違えたかわからない場合、今、特に問題なければ、一刻を争う状況ではないと思われるので落ち着いて、医療機関に連絡して、指示を仰いでください。
薬によっては、自己判断でやめてしまう方がよくない場合もあります。その後の薬の飲み方や対処の仕方については、勝手に判断しないで、医療機関の指示に従ってください。

大人の薬を誤って飲んでしまった場合について。
最近では、OD錠などと言って、口の中で溶けやすい薬も増えてきたため、小さい子どもでも、大人の薬が簡単に飲めてしまうようになりました。
糖尿病の薬、血圧の薬、心臓の薬、精神安定剤、睡眠薬などを飲んでしまった場合は危険です。
直ちに病院に連絡し、飲んだ可能性のある薬やお薬手帳を持参して受診してください。

医師や薬剤師に連絡が取れない場合の、救急連絡先は
大阪中毒110番  072-727-2499 (365日 24時間)
つくば中毒110番  029-852-9999 (365日 9~21時)

Ⅲ. 飲み間違いに対して行われる処置

それでは、薬を飲み間違えたり、大人の薬を飲んでしまったりしたときに行われる処置について説明します。以下のような方法があります。

1.催吐(薬を飲んでしまってから1~3時間以内)
水または牛乳を飲ませて、のどの奥を機械的に刺激して、飲んでしまった薬を吐かせる。

2.胃洗浄(薬を飲んでしまってから1時間以内)
胃の中にチューブを入れて洗浄液(水や生理食塩水など)を流し込み、洗浄液とともに胃の中にある薬を吸い出す。致命的な薬の時に行う。

3.強制利尿
補液や利尿薬により、薬を尿として体外に排泄させる。

4.活性炭投与
活性炭に薬を吸着させて、薬が体内に吸収されないようにする。

5.小腸洗浄
洗浄液を流し込み、小腸まで到達してしまった薬が吸収されないように、肛門から排泄させる。

6.薬剤投与
飲んでしまった薬と反対の作用の薬などを投与して、その作用が発現しないようにする。

7.血液透析
血液を一度体外に出し、機械を通過させて薬を取り除いてから、体内に戻す。
などなど。

いずれの方法にしても、病院で処置を受けることになると、かなりおおごとです。
「大変だ!!」というところから始まり、病院に電話をかけ、出かける支度をし、他に兄弟がいる場合はこの子も連れていくのか、誰かに預けるのか……なんてとにかくあたふた、バタバタ。ただならぬ雰囲気に、どんなに小さな赤ちゃんでも、親の焦りや不安を察知します。

元々、病気で薬を飲んでいた場合は、薬によるダメージに加えて精神的なダメージまで上乗せされ、それほど大したことない状況でもかえって症状を悪化させてしまうことがあるかもしれません。
このような事態が起こらないよう、薬の取り扱いには、細心の注意を払っていただきたいと思います。

薬は、使い方を誤ると、毒になります。
たまにいるのですが、「すぐに病院に来られなかったから、お兄ちゃんの薬を少し減らして弟に・・・」なんて、おそろしいことは、決してしないでください。
適当に薬を飲ませて事故になるよりも、咳や熱で苦しむ子どもと一晩耐えたほうが、よっぽど安全です。

Ⅳ. 誤飲を防止するために

誰も、好き好んで、薬を間違えて飲ませたり、子どもが勝手に飲める状況にはしていないことでしょう。
病気が長引いて看病で疲れていたり、子どもが次々と具合が悪くなって、幼稚園や学校に連絡もしなきゃならないし、病院にも連れて行かなきゃならないし、家のこともやらなきゃならないしと、きっと必死で駆けずり回っての結果、「大変!間違えて飲ませちゃった・・・」という状況になることと思います。
薬を飲ませる準備をしていたら、子どもが手を出してきたり、泣き出したり、喧嘩を始めたり・・・。「あ~、もう、泣きたいのはこっちなんだけど」 そんなときもあるかもしれません。

時間がないので流れ作業で、なるべく短時間で飲ませたいのはわかりますが、でも

1.薬を飲ませるときは、落ち着いてひとつずつ準備すること。

「一つ飲ませている間に、もう一つの薬を用意する」 とか、「一人に飲ませながら、もう一人の薬を用意する」ではなく、とにかく一人ずつ、どんなに慣れたいつもの薬でも、しっかりと確認しながら。まずは、一人分の薬だけ、机の上に出す。

今から飲む薬を、薬が入った紙袋から 1回分ずつ全種類出して並べる。
混ぜてもよい薬は一緒にして、なるべく飲ませる回数を少なく準備。
それから、落ち着いて、一人に飲ませる。
次に、別の子の薬を同じように準備して飲ませる。

二人以上の薬を同じテーブルに並べて、子どもも並べておいて一緒に飲ませるなんて、危険なことは避けてほしいです。

「薬の支度をしている間、子どもが邪魔をしないよう見ていてあげる」でも、「薬を飲まないほかの子の相手をしてあげる」でもよいのです。薬を飲ませる人に、心の余裕があることが大事ですし、ゆったりした状況だと、子どもも嫌がらずに飲んでくれることが多いです。

2.薬は病気を治すためのものであることを子どもに伝える。例え0歳の子どもでも。

薬はジュースでもおもちゃでもありません。そこがしっかり伝わっていないと、親の気づかないところで一人で飲んでしまったり、飲み散らかしたり、口に入れても出してしまったり。
赤ちゃんや子どもでも、伝えればわかります。
薬を飲ませるときや、家族が飲んでいるのを見ているときに、しっかりと説明してあげてください。

3.薬は子どもの手が届かないところに保管する。

椅子を使って冷蔵庫を開け、しまってあったシロップを全部飲んでしまった子どももいます。
薬であることは説明してあっても、子どもは欲求をかなえるためには、思いもよらない行動に出ることがあるのです。
大丈夫だと思っても、家族の薬はすべて、子どもの手の届かないところ(目につかないところ)に保管しましょう。
そして、たとえ短時間でも、子どもが触れるテーブルの上などに薬を放置しないよう、家族で徹底しておきましょう。
繰り返しますが、薬は、使い方を誤ると、毒になりますから。

この3つを意識することで、誤飲のリスクを減らす事ができます。
また家族で誰かが正しい知識を持っているだけで、家族全員に正しい対処方法を教えることもできます。

薬剤師ライターのたんぽぽむし


薬の誤飲というのは、普通の家庭でも起こりうる事ですので、ママ友達同士でも、こういった正しい対処方法を広める事が大切です。

また、今回は子供の誤飲に焦点を絞って居ますが、「風邪薬をいっぱい飲めば直ぐに効く」「痛み止めを少量飲もう」といった行為が危険であったり無意味であるということが理解できますね。
いざという時に思い出せるように是非ともブックマークをお勧めします。

編集後記

【薬コラム連載】熱性痙攣(ひきつけ)と薬の使用

著者 薬剤師ライター たんぽぽむし

小児医療に携わって15年。主に薬関係・自然育児について執筆していきます。美味しいもの、きれい&かわいいもの、からだにやさしいもの、そして子供たちの笑顔に触れたとき幸せを感じます。