【現代版】小説家になる方法②

前回は小説家になるために「身につけるべき」才能について、また表現力の高め方についてを解説しました。

今回はさらに、オリジナル小説のレベルを上げるために知っておくべきことを解説します。

 

全ての言動には意味があるべき

文豪の作品を読んでみると、ある意味彼らの小説が非常に簡素でシンプルであるということが分かります。それはどんな長編小説であれ、彼らが「必要なこと」以外は書いていないから。

言い換えれば、小説に登場する人物達の言動には全て意味がなければありません。つまり彼らの言動は、小説の内容となるだけの価値がなければいけないのです。

しかしそれは、必ずしも物語を進行するための言動であるべきというわけではありません。

では具体的に、言動にはどのような効果を持たせるべきなのかを考えてみましょう。

◯主人公のキャラクター(個性や性格)を示す言動

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例えば前回例に出した文章をより長くして、以下のような文章が書いたとしましょう。

a「彼はベージュ色のレザー張りの助手席に右手を伸ばし、年季の入ったツイードのジャケットを掴むと、かがむように車から降りて立ち上がった」b「彼は価値のある古書をたたむようにそっとドアを閉めると、鍵を回してからその場を離れていった」

aの一連の動作には、前回書いたように以下のような事実が含まれています。

・彼の車は左ハンドルの外車で、イタリアのスポーツカーである可能性が高い

・彼は少なからずお洒落に関心がある

・彼は物持ちが良い可能性が高い

それに加えbの文章から、彼についてより多くのことが読み取れます。

彼は価値のある古書=もろく壊れやすいものを扱うようにそっとドアを閉めて、“鍵を回した”。つまり彼の車は鍵を差して回さないと施錠のできない時代の車であり、もろく壊れやすい。つまり旧車か、それに近いものだということです。

イタリアのスポーツカーは実用性が低い。いたるところが壊れ、ユーザビリティも悪い。それに加えて旧車だとしたら、相当手をかけていないとまともに走ることはできません。

しかもaの文章からその季節は冬だと言うことが分かっています。冬のように寒いときには旧車のエンジンは非常に調子が悪いですから、普通は乗りません。しかし彼はそれに乗っている。

つまりこの非実用的な車が彼の唯一の車だということです。

なぜ彼がこの車に乗っているかといえば、それは恐らくそのフィーリングやデザインが好きだからと予想できるでしょう。

そういうわけでこの2つの文章を読むだけで、どうやら物持ちが良く、お洒落であり、おそらく芸術品や文化的なものに関心があり、いくぶん常人離れしており、偏屈かもしれないという彼の性格や特徴を推測することができます。

この流れでいけば、例えば彼がデジタル時計よりもアナログ時計、さらに言えばクオーツ式よりも機械式の時計が好きだろうということが本文に書かれていなくても予想できる。

このように、その言動があることによってその登場人物のキャラクター付けができる場合。こんな言動は積極的に小説に取り入れていくといいでしょう。

◯物語の進行を担う言動

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これは単純です。

つまり物語が進行していくための言動のことであり、それは言ってしまえば別れ話の原因となるクリスマスの仕事の話でも、復習の原動力となる相棒の死でもいいわけです。

こういった言動に関しても、いささかくどくなることを覚悟で、情景がしっかりと想像できるように書くのが重要なところです。

しかしただ普通の情景があるだけでは面白くない。例えばその情景はその事件を象徴するようなもので、非常に印象的であると良いでしょう。

例えば個人的に好きでいつも例に出しているドストエフスキーの『罪と罰』には、主人公が殺人を犯したときのできごとが事細かに書いてあります。

そこで主人公は心理状態やその状況からしていかにも「そうしてしまうだろう」と思われる言動を次々とっていく。まるで自分がそこにいるような気になってしまいます。

この場面は非常にスリリングで印象的で、読者は1000ページもの長編小説を読み終わるその瞬間まで、この場面を絶対に忘れないでしょう。

全ての言動はこのようにして描かれているのが好ましいです。

ちなみにドストエフスキーはそれだけでは気が済まない。情景にコンテクストを隠し、そこに伏線や第二の意味を込めたりというのが彼の得意技だからですね。あるいは彼のテキストのほとんどがそれで出来ていると言っても過言ではありません。

この場面でも、彼は主人公が「部屋に入った」という突発的でなんの仕掛けもなさそうな一言に、「踏み越える」という意味を併せ持った単語を使うことで、『罪と罰』というタイトルにも関わる「法を踏み越える」という第二の意味を持たせました。

もちろん必ずしもそこまでする必要はありませんが、言動や情景の描写でそういった表現ができるのだということを覚えておいて損はないでしょう。

◯伏線を張る言動

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さらに物語の伏線を張るための言動もまた、多く取り入れていくべきです。

ただし伏線を張るための言動というのは、あまり長々と書くよりはさらりと書き流してしまう程度の方が効果的です。もちろん誰も気づかないのでは仕方がありませんが、くどくどと説明するのではなく、少し考えると分かるような仕組みにするのが良いでしょう。

また物や事象などに伏線を隠すのも良いでしょう。

例えば主人公が聞いていた歌のタイトルだけが書かれているが、実はその歌詞を調べてみると物語の重大な部分を説明したり、予言するような歌詞になっていた。などそういった仕掛けが面白さとなるはずです。

◯シンプルに読者を楽しませる言動

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そしてこれは言わずもがなですが、シンプルに読者を楽しませる言動も重要です。例えば映画ロードオブザリングはJ.R.R.トールキンの書いた原作指輪物語に比べれば、ずいぶんと戦闘シーンに比重が置かれています。これは他でもなく、戦闘シーンがかっこ良く、感動的だからです。

そして現代においての小説には、やはりこういった要素が必要です。

あえてこの言動を最後に説明したのはただ、「こればかりになってしまうと中身の薄い小説になってしまうから」です。ロードオブザリングには象徴的なテーマ、複数のメッセージ、そして物語としてのしっかりとした意味や中身があるからこそ、あれほどの長さの戦闘シーンも「ありだ」と思わせる説得力があるのです。

ですからまずは多くの意味のある言動によって小説の大筋を構成しましょう。そのあと、必要に応じてこのシンプルに読者を楽しませる言動を付け足していくのです。

また、楽しい、かっこいい、面白いからこそこういった「意味のない」言動は許されます。意味が無く、しかも面白くもない身内ネタや自己満足な言動はまったく価値がないどころか、小説自体の価値を下げてしまいますので気をつけましょう。

 

いかがでしたか??

今回は小説に描かれる主人公の起こすイベントについて、どんな言動を描写すべきか、その描写方法などと共に解説してみました。

次回もお楽しみに!