【値段別】イタリアのスーツ&ジャケット ブランド辞典③

イタリアジャケットブランド辞典もそろそろ大詰め、20万円以上の高級ジャケットについてを解説していきます。

正直言ってこの辺のブランドを買う人というのは、すでに色々知っている着道楽であることが多いので、今さら紹介する必要があるのか果たして謎ですが。まあ、そうは言っても辞典と言ったからには紹介してきます。

第一回はこちら

第二回はこちら

ジャケットなんぞが20万円以上になる理由

それよりどうして、ジャケットなんていうものが中古の自動車が買えるような値段になるのか、それを先に少し考えておきましょうじゃありませんか。

20万円以上のジャケットはその多くが、ハンドメイドかもしくはハンドメイドを売りにしているブランドのセカンドラインのマシンメイドです。これから紹介するブランドも多くは、それに当てはまります。

ハンドメイドのジャケット=つまり行程のほとんどにミシンを使わず、針と糸で職人が作るジャケットというのは、非常に時間がかかり、さらには熟練した職人でないと高品質で作ることができないため、その職人の確保に時間が掛かります。

ハンドメイドは生産ラインの良し悪しが物を言うマシンメイドとは違い、そこにいる職人の腕次第という厄介な代物なわけです。だから極端な話でいくと、大して名前の上がっていないブランドでも、そこに天才的な職人が数人いたとしたら、そのブランドのジャケットがブリオーニを抜くクオリティになってしまうことは、あり得なくはないのです。

ブリオーニのような一流ブランドは、それを防がなければいけませんし、さらには腕の良い職人がいなくなって、ファクトリー自体のレベルが下がってしまうなんてことは絶対にあってはいけない。そういうわけで、サルト=職人の育成機関まで作ってレベルの高い職人を確保している。それにお金が掛かるわけですね。

ハンドメイドというのは手間と時間がかかるだけでなく、それを存続していくのにも一苦労なんです。そう言う理由もあって、40万だとか60万だとかびっくりするうような金額がつくのです。

また使う生地の品質と希少性についても注目すべきでしょう。特にkiton キートンが用いる生地は、一般人には到底扱うことのできないような、繊細な生地ですね。美しい光沢感と滑らな手触り、このために人間はどれほどのお金を投げ出したことでしょう。

20万円付近ジャケットブランド

さあ、それではこのシリーズも最後、20万円以上のジャケットブランドを紹介していきましょう。最初の方は20万円付近のブランドで、ハンドメイドとマシンメイドを両立したブランドを。後半は完全なハンドメイドを特徴とした一流ブランド達を紹介していきましょう。

まずは20万円付近のブランドです。

Stile Latino スティレ・ラティーノ

attolini10

かの有名な、というかあとで紹介するナポリ仕立ての最高峰ブランドであるチェザレ・アットリーニの兄弟が始めた、アットリーニのセカンドラインとも言えるブランドがスティレ・ラティーノです。

過去にはEligo エリーゴと呼ばれていましたが、Stile Latino スティレ・ラティーノ=ラテンスタイルという名前に変え、最近ではVi A ヴィンツェンツォアットリーニという名前でも展開しているようですね。なんともビジネスの適当なナポリ人気質ですね。

それでもスティレ・ラティーノのコレクションは今最も注目されているといっても過言ではない面白さ。

ヴィンテージな生地を使用し、アットリーニの技術によって作り上げられるこのブランドのジャケットは、常に圧倒的な正当性をもったクラシコを求められるチェザレ・アットリーニができないことを、進んで挑戦していくコレクションラインとも言えるでしょう。

Stile Latino スティレ・ラティーノのジャケットはまた、セカンドラインにしては手が込んでいることも特徴ですね。もちろん多くの部分はマシンメイドではありますが、やはりアットリーニの影響か、ちゃんと要所を抑えた作りになっており、ややタイトなサイジングのものでも、違和感なく着ることができます。

Sartorio サルトリオ

sartorio

以前はチェザレ・アットリーニ、現在はkiton キートン社のもとで作られるサルトリオのジャケットは、ディティールこそわりと控えめで、それほど派手さはありませんが、着てみるとその凄さに驚かされるブランドです。シルエットが計算されつくされており、イタリア人のバランス感に舌を巻きますね。

日本のセレクトショップが販売しているセレオリのジャケットを、このサイトではかなりおすすめしています。それはこれらのセレオリジャケットが、下手なイタリア製よりもよっぽど手が込んでおり、品質も良く、日本人の体型も考慮されていてコストパフォーマンスに優れているからです。

このサルトリオのジャケットはどうでしょう。ボタンホールなどを含めて多くがマシンメイドで、全く華がありません。そのわりに値段は20万円という。生地も良いですが、しかし日本のオリジナルなら10万円もあれば同じ生地で、もっとハンド比率の高いジャケットを作れてしまうのではないでしょうか。

しかし着てみると、「ああ、なるほど」と感じます。

着丈にウエスト、ラペル幅。完璧なクラシックであるkiton社が割り出した究極の比率を崩すことなく、現代的なニュアンスを取り込んでいる。

これはもとより現代的なジャケットで有名な10万円付近のファクトリーブランドにはできないことであり、「目指すところはブリオーニだ」と断言しているベルベストにもできないことです。対抗馬がいるとすればやはりそれは、Stile Latino スティレ・ラティーノではないでしょうか。

ANDREA CAMPAGNA アンドレア・カンパーニャ

IMG_9637

バーニーズニューヨークなどで展開されているアンドレア・カンパーニャは、イタリアらしい自然で色っぽさのあるシルエットと、洗練された都会的なスマートさを併せ持つミラノ仕立てのブランドです。

正直なところかなりマイナーなブランドではあるので、見つけるのが至難の技であるかもしれませんが、それでも意外に手に入りにくいミラノ仕立てだけあり、見つけた時の感動は言葉にならないものがありますね。

端正でバランスの取れたそのシルエットは、マシンメイド最高峰と言われるベルベストを数着持っていて、そのバリエーションやらローテーションやらを増やしたい、けれど別のもう少しランクの高いブランドを試したいという人におすすめです。

ハンドメイドの行程を多数経て作られるアンドレア・カンパーニャのジャケットは、そうでなければ作ることのできない立体感と、緩やかで過不足のない絞りが着る人の佇まいを優雅にしますね。

ちなみにこのアンドレア・カンパーニャは、ジャンニ・カンパーニャの息子です。

30万円以上のハンドメイドブランド

さあ、このシリーズ最後となりますが、30万円以上のハンドメイドブランドを紹介しておきます。

もう良く知られているブランドがほとんどではありますが、おさらいも兼ねて。

Brioni ブリオーニ

Bryce-Brioni

ローマ仕立て、果てはクラシコ・イタリアの原型を作り出したとも言われているのがこのブリオーニ。ブリオーニの特徴は素晴らしく軽い着心地ながら、威厳のあるスタイルで、堂々とした立ち振る舞いを支えるような安心感があることですね。

特にスーツはその傾向が強く、ほどよく構築的で着ている人の足りない部分を補ってくれるような良さがあります。カジュアルジャケットの方はもう少し柔らかさを重視し、繊細な生地を使ってはいますが、それでも一貫して洗練された雰囲気ですね。

この辺りが、世界中の「人前に立つ」男達がこぞってブリオーニを選んでいる理由ではないでしょうか。

ブリオーニのジャケットは恐ろしい値段で、50万〜が当たり前という世界です。それでもやはり、ブリオーニが選ぶ生地と、そのハンドメイドを駆使した時間と手間の掛かる仕立て、そして世界最高峰のサルトリアそのものを守ることそれ自体に対し、それだけのお金を出したいという人は多いということですね。

最近では少し細身のシルエットや、やや着丈の短いものも展開していると、ブリオーニのショップの方から伺いましたが、確かに少しだけシルエットを変更しているようです。ほんのわずかな改変にとどめているのは、クラシコの雄であるブリオーニのプライドです。

Kiton キートン

KITON

 

ブリオーニと並んでイタリアを代表するサルトリアブランドと言われているのがキートン。ブリオーニは洗練されたシルエットと堂々たるスタイルを作り出すローマ仕立てですが、キートンは根っからのナポリ仕立てです。

何よりも軽やかで、自然なシワまでも着こなしとして楽しむその仕立ては、一度着た者を虜にします。もちろんナポリ仕立てとしては土臭さの弱い方ですが、それでも世界にその名を轟かせるトップブランドの中ではずいぶんとリラックスしていて、あくまでナポリのブランドとしてのアイデンティティを守っています。

キートンのジャケットの値段の理由はもちろんそのハンドメイドの行程の多さや、熟練職人による技にもありますが、他ではめったにお目にかかれないような希少な生地のコレクションにこそあるでしょう。

七光りするシルクのような上質なリネン、キッドモヘヤ、高番手のウール、何もかもがまるきり芸術作品のように美しい。そして繊細です。

他のナポリ仕立ては上質な生地とは言え、わりと控えめな印象の生地を使うことが多い。これはサルトリアがあくまで職人技を売っているのであって、贅沢さを売っているのではないというところから来るのかもしれませんね。しかしキートンは既製服で世界のトップに立つブランドだけあり、その生地のゴージャスさでは、他を寄せ付けません。

もちろん日常使いのことを考えたらどう考えても不便な生地ばかりですが、なに、この価格をジャケットに出すことのできる人に、「こんな繊細な生地、大丈夫?」なんて聞くことほど野暮なことはないでしょう。

La Vera Sartoria Napoletana ラ ベラ サルトリア ナポレターナ

6

他に比べれば少しばかり無名ではありますが、それでもハンドメイドのジャケットを語る上で外すことのできない存在がこの、ラ ベラ サルトリア ナポレターナです。ナポリの本物のサルトリアてなほどの意味です。

なんのことはない、そんな分かりやすい名前か、と思われるかもしれません。しかし本当のナポリ仕立てというのはス・ミズーラすなわちオーダーメイドでしか服を作らないナポリ人の職人のプライドが生み出しているものであり、そこで既製服ブランドが「本物」を名乗るということは、かなりの覚悟がいることです。

このラ ベラ サルトリア ナポレターナは、kiton キートンでマスターカッターをつとめていたオラッツィオ・ルチアーノが立ち上げたブランドであり、ナポリ仕立てを牽引しているという自負があったからこそ付けられたブランドネームだと思います。

実際に着てみると、このブランドが意外にもモダンなサイジングとバランスで攻めていることが分かります。着丈はやや短め、ウエストも結構絞られていて、コンパクトな印象がある。しかしそんなサイジングありながら、着ていることを忘れてしまうような着心地は、これこそナポリ仕立てだ!と思わずにはいられません。

ディティールに関しては、ナポリ仕立てらしさを感じさせるステッチワーク、角の立ったポケットフラップなどが魅力的ですね。

ナポリ仕立てが欲しくてkiton キートンを選ぶ、というのは良い選択ではありますが、このラ ベラ サルトリア ナポレターナと、これから紹介するチェザレ・アットリーニを試着する前に買っちゃいけません。3つを着て比べて、初めてあなたの思う「ナポリ仕立て」にどれが一番近いのかが分かるでしょう。

Cesare Attolini チェザレ アットリーニ

attolini02

このブランドを最後に持って来たのは、何を隠そうなんとなくアットリーニ贔屓だからですが、まあその辺はご愛嬌。チェザレ・アットリーニはナポリ仕立てのディティールを作り出した張本人であるヴィンツェンツォ・アットリーニの息子であるチェザレ・アットリーニのブランド。

そのため、ナポリ仕立てがなんたるか、というのを感じるのにはもってこいのブランドです。

ナポリ仕立てといえば一般に、パルカポケットやマニカ・カミーチャなどのディティールが取り上げられます。しかしアットリーニにとって「ナポリ仕立て」とは究極に軽い着心地と、身体に沿った立体感、そしてナポリ人の粋を表現する仕立てのことであり、パルカ・ポケットやマニカ・カミーチャなどはそれを実現するための細工でしかない。

そういうわけで、ディティールから入るのではなく本質からナポリ仕立てを感じられる。チェザレ・アットリーニのジャケットはそこが素晴らしいんですね。

仕立ても手縫いを駆使したもので、一切の硬さを感じさせない。これは、なんとかしてスーツから硬さをなくそうとしたヴィンツェンツォ・アットリーニの理念がブランドの芯となっているからではないでしょうか。

もちろんCesare Attolini チェザレ・アットリーニのジャケットもまた値段は30万〜50万円とかなり高額です。それでも、その価値はあるのではないかと漠然と感じさせる。約70人の小さなファクトリーで、ナポリ人が針と糸を手にジャケットを作っている姿を想像すると、なんとも愛おしいわけです。

 

いかがでしたか?

今回は3回に渡って、イタリアのジャケットブランドを紹介してみました。実際にはジャケットブランドはスーツブランドでもあるので、参考にしていただくと良いでしょう。