Henri Giraud(アンリ・ジロー) テイスティング レポート

アンリ・ジローのテイスティング レポート

銀座三越のフランスフェア2017の一環で、毎日違うシャンパーニュメゾンが特設バーカウンターに出展して、グラスワインで最高級のヴィンテージ(プレスティージュシャンパーニュ)を楽しめる企画があり参加してきました。

ドン・ペリニヨン、ボランジェ、ペリエ・ジュエ、クリュッグ、ローラン・ペリエと偉大なメゾンが日ごとに提供されるのですが、ちょうど訪ねたタイミングが5月11日のアンリ・ジローでした。
「アンリ・ジロー」いままで名前は聞いた事があるものの、どんな味か知らず飲む機会も無く、グラスの出すお店はまず無いので、今回が初めての体験となりました。

アンリ・ジローの歴史とは

アンリ・ジローの歴史は、17世紀初頭に遡る。ルイ13世統治下の1625年、創業者のフランソワ・エマールがシャンパーニュ地方でも良質なブドウの産地として有名なアイ村に畑を手に入れた。

これが、現在のアンリ・ジローのシャンパーニュが高い評価を受ける大きな理由となる。

10世紀以前から、石灰質の土地であるシャンパーニュ地方は、シャルドネやピノ・ノワールなど良質なブドウを生み出す地として知られていた。中でもアイ村のピノ・ノワールは評価が高く、17世紀にシャンパーニュ造りが始まった頃には、多くのメゾンがアイ村産のピノ・ノワールを欲しがったという。特に熱心だったのが法王や王族で、歴史の証人灯として、今もアイ村にはフランソワ1世やアンリ4世の圧搾場跡が残っている。ちなみに、アンリ4世は「アイ卿(Lord of Ay)」と呼ばれ、アイ村の歴史のひとつとなっている。
アンリ・ジロー公式サイトより抜粋

アンリ・ジローの歴史について詳しくないもので公式サイトより抜粋させてもらいましたが、アイ村は全てのクリュ(畑)がグラン・クリュに認定され、フランスワインの産地における、プルミエクリュの上で最上級のぶどうを産出しています。
完全なRM(レコルタン・マニピュラン)ではありませんが、畑がこのように良質で選果も丁寧に行っているそうです。

当日は5種類のシャンパーニュがグラスで提供されていました。
Henri Giraud Argonne 2004 ¥4,968
Henri Giraud Fût de Chêne Rosé MV ¥4,212
Henri Giraud Fût de Chêne MV ¥3,132
Henri Giraud Hommage (New Bottle) ¥1,296
Henri Giraud Esprit Nature ¥972

Henri Giraud Hommage (New Bottle) オマージュ

「これがノン・ヴィンテージか!」
カウンターで声を上げてしまいそうな程に驚きました。
月に何回もシャンパーニュを飲んでいますが、予算の兼ね合いで多くが2500~3500円のノン・ヴィンテージです。
例えばネゴシアンだとポメリーやモエ・エ・シャンドン、無名で低価格なレコルタンなどもグラスシャンパーニュとして飲んでいます。
ところがオマージュを飲んだ時は、「これはすごい…」と言わざるを得ませんでした。

ノン・ヴィンテージでありながら、廉価なシャンパーニュとはクオリティが全く異なります。
グラスを手に取り、しばらく飲むのをためらった程です。
あまりに香りの良いワインは、飲まずに香りをしばらく楽しんで居たい気分になります。

例えばモエ・エ・シャンドンは「まあ、こんな感じ。飲むか〜」
ポメリーが「う〜ん、いい香り!飲むか!」となるのが
オマージュのグラスを手にとった時に「これは…凄いな…」としばらく口を付けれませんでした。

ノン・ヴィンテージ、つまり複数の年をブレンドして作った、ラインナップの中でも廉価なグレードにもかかわらず格別に香りが良いのです。香水のような複雑さがグラスの中で揺れているようです。
シャネルやゲランといったフランスではなく、どちらかと言うとイギリスのペンハリガンのような男性的なエレガントさを併せ持っています。割たての薪のような香りや、草のようなニュアンスなど、森の中を散歩しているような気分にさえなってしまいます。

Henri Giraud Fût de Chêne Rosé MV

(MVとは上位品のNVのようなもので、マルチ・ヴィンテージの略)

色調はうっとりするほどに美しいピンク色で、自然な色合いの中に肌理の細かい泡が溶け込んでいます。
発泡はそこまで強くなく、ゆっくりと泡が立ち上がります。
ジャムのような甘みがあるのに、採れたての木苺のような小粒の酸がありエレガントな味わいです。初めにはちみつのような香りが漂ってきます。

フレッシュな酸と落ち着いたジャム系のほのかな甘みというのは両立が難しいです。何故ならフレッシュさを全面に出すとどうしても甘みが安っぽくなり、ジュースに含まれる果糖ブドウ糖液糖のような甘さを感じる事が多いです。このロゼは、オーク樽で寝かせた辛口のシャンパーニュの下地がありながら、上質なブルゴーニュのピノ・ノワールの果実感も楽しめるという絶妙なバランスに仕上がっています。
全体的にどっしり落ち着いているのに、時折見せる可愛らしい香りがまるで、四十代の容姿端麗な女性がふと見せる可愛い仕草にもどこか似ています。

Henri Giraud Argonne 2004

このアルゴンヌは、男性の為にあるシャンパーニュです。

樽熟成と長期間の瓶内二次発酵から生まれる香りは不完全さこそ美しいということを体言しているものです。
グラスを手に取ったとき、ブルジョワ階級の書斎をイメージしました。アルゴンヌは最高品質で作られているのに経年変化によって、角が削り落とされて滑らかな質感です。只の冷えたシャンパーニュとは全く異なり、新鮮さはなく荘厳な香りがゆっくりと立ち上がります。
それがまさにエンパイア様式で統一されて作られた書斎のように、複雑なディティールと少し古臭さを感じさせます、時折おり葉巻のような香りも。時間が経って温度が上がってゆくと、それをより一層感じさせ絵画の保存室で古びた布地を下ろすと出てくるポール・ゴーギャンの油絵のような、深い感情を引き出すニュアンスを持ちます。

そんなイメージですが、他のシャンパーニュ・メゾンと比べると先ず鮮やかさが低いのが特徴です。
例えば、直近で飲んだものだとペリエ・ジュエ ベル・エポック、ボランジェ、ルイ・ロデレールですが、素晴らしいシャンパーニュの多くには華やかな花の香りが含まれている物が多いのです。
このアルゴンヌには華やかというよりは、落ち着きのある蜜のような香りと共に、三十年以上経ったブレンデットウイスキーのような複雑さが含まれています。特にオーク樽から感じさせるフレーバーは、具体的にはスコッチウイスキーのグレンリベット(オークフィニッシュ)にどこか似た雰囲気がありました。

つまり、華やかなシャンパーニュの持つ女性らしさというよりは、白いヒゲを蓄え、仕立てのよいジャケットを羽織ったような男性が、書斎からガーデンを見渡し飲んでいるような印象を受けました。

アンリ・ジローとは

先ほどのテイスティングレポートも然り、ごく個人的な感想ではありますが、私にとってのアンリ・ジローとは英国紳士のダンディズムといえます。
シャンパーニュのメゾンは5000種類以上あり、偉大なメゾンは数多くありますが、これほどまでに真摯な姿勢が伝わってくるシャンパーニュはまずありません。

シャンパーニュの事を俗っぽく「エロい」と表現する人が居ますが、確かに言っている事は分かります。高級で良いシャンパーニュになると、華やかな花の香りや、熟れた果実、艷やかでどこか満月の差し込む寝室のような雰囲気があります。
ところがアンリ・ジローは硬派も硬派で、書斎で文学にひたむき合うような知的な男性さを感じます。ボランジェも硬派で男性らしさがありますが、あちらは007のような色っぽさが混ざっています。

ちなみに最後に「アルゴンヌ」を頼み、その後に少し残った「オマージュ」を口にしましたが、最上位のアルゴンヌの後に飲んでもしっかりと楽しめる力強さがあります。むしろ日常的に飲むにはオマージュの方が向いているくらいです。
月に1度はオマージュ、彼女の誕生日にロゼを、自分ひとりでの記念日にアルゴンヌを飲むような男性になりたいと強く思いました。

今回、3種類のアンリ・ジローを同時に楽しむことができましたが、ブランドのもつインスピレーション、統一感を強く感じることができるメゾンです。

公式サイト http://www.kfw-henrigiraud.co.jp/

著者 おはし

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