Richard Ginori リチャード ジノリの魅力

イタリア生まれの白

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東ドイツからチェコを経て、ハンガリーへと続くこの中東欧ヨーロッパは、日本で愛される数々の洋食器を生み出した、陶器の地です。

マイセン、ドレスデン、アウガルテン、ヘレンド……優雅で美しい食器として有名なものばかりです。

しかしその一帯から外れたイタリアに1735年、ほとんど唯一と言ってもよい一流の陶器が生まれました。それは他のどんな陶器ブランドも持たない、明るく爽やかな南ヨーロッパの空気をわずかに含んだエレガントな白磁。

リチャード・ジノリのベッキオホワイトです。

イタリアは南ヨーロッパの温かな気候から多くの鮮やかな植物や農作物に恵まれた国です。

そんなイタリアの色に対するこだわりは深く、あらゆる建築物やルネッサンス時代に花開いた絵画、そして現代の世界をリードするアパレルと、様々なジャンルで他の国の人々を常に圧倒してきました。

特に情熱的な赤に対する愛情と、そして美しく清々しい白に対するこだわりは、イタリアならではのもの。

そういった背景もあって、リチャード・ジノリのベッキオホワイトは他のブランドの食器にはない、軽やかで独特な白を与えられることになったのです。

今回はそのリチャード・ジノリと、ベッキオホワイトの魅力に迫りましょう。

リチャード・ジノリの歴史

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イタリアの中部、ルネッサンス時代より商人たちの手によって富を蓄え、栄華を極めたフィレンツェ。その近郊はおだやかな葡萄畑と、丘隆地帯の広がるトスカーナ地方です。

そのトスカーナで1735年、カルロ・ジノリ侯爵が自領であるドッチアという場所に陶器窯を開いたのが、このリチャード・ジノリの始まりでした。

当時のイタリアは、スペインのセビリャなどで製造され、マヨルカ島を経て輸入された陶器をベースにしたマヨリカ陶器が全盛の時代。厚手の焼き物に鮮やかな色合いをつけたこの陶器は、いかにも地中海ヨーロッパらしく美しいものではありましたが、中東欧ヨーロッパのエレガントで高級感のある食器とは、まったく違う文化のものでした。

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そんな中、中東欧ヨーロッパで名声を獲得していたマイセンや、宮廷的な美しさを生み出すウィーン窯に相応するエレガントな白磁を作ろうとしたのがジノリ侯爵だったのですね。

彼は鉱物学に造詣が深く、トスカーナで自ら原料土を捜したり、磁器の研究を行い、イタリア初となる白磁を完成させました。ベッキオホワイトはジノリ最古の作品で、恐らくこの時代よりそれほど変化していないものなのでしょう。

1896年にジノリは、イタリア北部の大都市であるミラノのリチャード製陶社と合併して、現在のリチャードジノリとなりました。昔は常にライバル同士であったミラノとフィレンツェですが、19世紀前半からの長いイタリア統一運動の末、1861年にイタリア王国の建国が宣言されてついに一つの国としてまとまっていた。

そんなことも、この合併を可能にした一つの要因だったのかもしれません。

1956年にはまた、イタリア陶磁器会社と合併し、ジノリはイタリア最大の陶磁器メーカーとなりました。洋食器を愛する人々にイタリアの食器を尋ねれば、一瞬の迷いも無く「ジノリ」と答える。現代において有名なブランドとなったジノリは、こんな歴史を辿ってきたのです。

リチャード・ジノリの美しさとは

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とは言ったものの、洋食器ファンの中にはジノリに格別な興味を示さない人も少なくはありません。

ジノリの食器には中東欧ヨーロッパの食器のような華やかさはありませんし、ゴージャスでずっしりとした堂々たる白もないからです。また、造形に関してはヘレンドのような繊細さもなければ、マイセンのような角の立ったシャープさもありません。

それではリチャード・ジノリの食器の魅力とは何なのか。

それはこの軽やかさと、親しみやすさです。

リチャード・ジノリのベッキオホワイトはまるで、真っ青な夏の海の上に浮かぶ雲のように白く、清々しい。デミタスカップにわずかなエスプレッソを注げば、ビアンコとマローネの対比は、他のどんな国の食器にもない絶妙なバランスで人を惹き付けます。

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そして角の立たないこの造形は、まるで毎日の生活に寄り添うようなしっとりとした感触。特別な時間には役不足だけれど、毎日の生活をもう少しだけお洒落にして、もう少しだけワクワクさせるような愛嬌の良さと、親しみやすさがこの形に現れています。

ジノリの食器は単品で食器棚に飾るものではありません。なぜなら、「マイセンやウィーン窯の食器」に比べたら、残念ながら軽すぎるし、エレガントな雰囲気も適わないからです。

しかし、ジノリの食器を何客も集めてみましょう。

そしてそれを、遊びにきてくれる仲間や友人達全員に分け隔てなく出してみる。するとジノリの食器は、ささやかな集会にイタリア人のラテンな陽気を少し加えて、しかし優雅で社交的な雰囲気を保って、その集会をこれ以上なく楽しいものとしてくれるでしょう。

だからこそリチャード・ジノリの食器は、オリエント・エクスプレス号の食器として正式採用されているのではないでしょうか。

あくまで使う人を主体にし、その生活をもう少しだけ楽しくお洒落にしてくれること。

それがリチャード・ジノリの魅力と素晴らしさなのです。