ライター田中流『お洒落なスーツ』の条件

毎日の仕事で着るスーツを、お洒落に着こなしたい!そんな風に思ったことがある人は、なかなか向上心のある人です。

多くの人は毎日の仕事で長い時間着ることになるスーツを、「消耗品」「作業服」としてとらえています。そのせいで、スーツにほとんど気を払わず、着こなしやスーツ選びに全く関心の無い人も少なくありません。

でも仕事着である以上、どうしてもスーツは着なければならない。

どうせ着なければならないのならば、お洒落に着こなしたい。着るのが楽しみになるようなスーツを選びたい。でもどんなスーツがお洒落か分からない!

今回はそんな人のために『大人になれる本』メンズファッション担当のライター田中が、お洒落に見えるスーツの最も基本的な条件を解説します。

着る人にサイズが合ったスーツであること

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お洒落なスーツが欲しい!と思ったときに最も注意すべき点は、やはりサイズ感です。スーツで最も大事なのはサイジング。これはもはや、すり切れるほどに言われていることですね。

まずはスーツを試着して、肩幅を見ましょう。肩幅はジャケットの肩がどのようなものかにもよりますので、フィッティングが難しいところです。

肩パットが入ったスーツや、独特のショルダーラインを持つスーツであれば、肩の終わりにぴったりとスーツ袖付け部分がくるものが理想です。

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現在流行りのアンコン仕様や、高度な仕立てで副資材を用いず作られる高級なスーツの場合には、袖付け部分が少し肩にのるくらい(スーツの肩幅がやや狭め)でも問題ありません。

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肩幅の合っていないスーツは、おそらくお洒落に着こなすことができないスーツです。その後、着丈やウエスト等も併せてチェックします。

着丈は好みにもよりますので、尻が隠れる位を基準に、そこから好みによって短くしていくような感じで考えましょう。現在の流行は短め、なんていう風に言われていますが、スーツに流行は関係ありませんので、心配しなくても大丈夫です。むしろあまりに短い着丈はバランスが悪く、スタイルを悪く見せてしまいます。

またジャケットの身幅がぴったりと身体に沿うことは、スタイルを良く見せるために非常に大切です。この部分のフィッティングはよく、ボタンを留めたときに拳一つ入るくらいの余裕を残すというように言われます。

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確かにその位のフィット感があると、スーツの着こなしがずいぶんとスタイリッシュに見えますね。それ以上に細いのも問題はありませんが、着ていて窮屈になってしまう場合があります。

また、ジャケットの袖丈やパンツの裾丈がしっかりと合っていることは、スーツの着こなしの良し悪しを測るポイントになります。

ジャケットの袖丈はシャツが指一本くらいのぞくようにするのがベストですが、多少前後していても構いません。パンツの裾丈はノークッションで、ぴったり最後までクリースが落ちる程度にするのがおすすめですね。

いかがでしょうか?これらのサイズ感のあったスーツを選ぶ、または必要に応じてお気に入りのスーツをお直しするだけで、スーツの洒落さは格段とアップするものです。

お洒落にスーツを着こなしたい!と思ったときは、真っ先にサイズ感をチェックしてみましょう。

ただ、ネット上などで誤解があるようですが、サイズが合っていれば全てのスーツがお洒落に見えるというわけではありません。その他にもスーツには大切なことがいくつか存在するのです。

それをこれから解説していきます。

仕立ての良いスーツであること

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さて、上ではサイズが合ったスーツこそがお洒落なスーツであるということを書きました。

もちろんサイズの合ったスーツというのは、お洒落なスーツの第一の条件です。

ですが、もっとお洒落にスーツを着こなしたいという人は、仕立てのよいスーツを選びましょう。

そもそも仕立ての良いスーツとは何か。ブランドが持つファクトリーで作られるにしろ、個人経営のテーラーで作られるにしろ、熟練した技術を持つ職人が、丁寧に時間を掛けて作るスーツのことです。

蓄積されたノウハウと職人の直感に従い、着る人を最も美しくシルエットを生み出すよう手で生地を裁断する。時間と根気の必要な手縫いやアイロンワークを省略せず、しっかりと丁寧に行う。各所の仕上げを非常に丁寧にこなし、着る人が視覚的にも満足できるような仕上がりにする。

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このようにして時間を掛ける仕立てのスーツは、一気に何十着分も生地を裁断して、安い賃金で雇われた労働者が工場のラインで生産するスーツとは全く異なります。

仕立ての良いスーツは、まず着心地が良い。人間がもっとも動き易く快適に感じるのは、温かい湯気に包まれたお風呂に裸でいるときではないでしょうか。誰にも見られないし、温かいし、何も着ていないので動きを遮るものがありません。

実は本当に仕立ての良いスーツは、その「何も着ていない」状態に限りなく近い、本当に柔らかい着心地を持っています。

そして仕立ての良いスーツは、シルエットが非常に綺麗です。各所が身体を包むように曲線を描き、ラペル(襟)が抑揚の乏しい男の胸に美しい立体感を作ります。

またそのスーツの個性によって、本来よりも更に体格良く、男らしい身体に見せたり、逆に筋肉質な身体を丸みを帯びた柔らかなラインに見せたりしてくれます。

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では、なぜスーツはハンドメイドであると着心地やシルエットがよく、なぜ逆に大量生産だとシルエットも平面的なのでしょうか。もう少し詳しく考えてみましょう。

スーツは元来、着る人にあわせてオーダーメイドで作られるものでした。その仕立てには手縫いやアイロンワークなど多くの手間を掛け、着る人に合った立体的なシルエットを作り上げていたわけです。

それをデフォルメし、効率よくミシン縫いで大量生産しているのが現在のスーツです。もちろん生産のレベルはずいぶんと向上しており、本格的になってきてはいますが、やはり熟練の職人が仕立てていたスーツにはシルエットも着心地も劣ります。

カットソーやニットのように、伸縮性のある生地でシンプルなパーツ構成で作られる服は大量生産でもそれほど着心地が悪く感じないかもしれませんが、多くの複雑なパーツを用い、人間の身体とほぼ同じ立体を作り上げることを目的としているスーツは、やはり機械や大量生産では再現できないのです。

結局スーツは熟練の職人が手で仕立てたものが、人間の身体の複雑な立体感に最も良くフィットします。そして立体的にフィットしたスーツはまるで第二の皮膚のように身体に沿い、動きを妨げないので、まるで何も着ていないかのように軽く柔らかい着心地になります。

さて、ずいぶんと回り道をしてしまいましたが、仕立ての良いスーツこそ、お洒落なスーツです。

シルエットの良さが「ジャストサイズのスーツ」に+アルファの効果をもたらしてくれるのはもちろんのこと、丁寧な各所の仕上げは高級感があります。

また熟練した職人のハンドワークによって得られる着心地の良さは、着ている人の動きを妨げず、疲労感を軽減してくれる。お洒落に大事なのは、お洒落していることを感じさせないような余裕です。

いくらお洒落をしていても本人がそれで疲れてしまっていては、本当のお洒落とは言えませんよね。

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着心地の良いスーツやジャケットであれば、それを着たまま、涼しい顔をして友達と海岸でフリスビーをすることも可能です。

上質な生地で作られたスーツであること

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また、ポリエステルやナイロンなどの化学繊維を用いず、質の良いウール等を用いた上質な生地で作られていることも、お洒落なスーツの条件です。

なぜ生地が上質だとお洒落なのか?これにはちゃんと理由があります。

皆さんは、お洒落というとどんなものを思い浮かべるでしょうか。

センスの良い色の組み合わせ、季節にあった服選び、お洒落といわれるブランド……。もちろんそういったこともお洒落をするうえでは大切なことです。しかし古今東西、大人のお洒落で最も重要とされてきたのは「品質」です。

例えば英国紳士の中では、誰にも気づかれず、最高品質のスーツを着ていることが最大のダンディズムだと言われています。

スーツの最高品質の一つの基準は先ほど紹介した、仕立ての良さ。そしてもう一つは生地の良さです。

厳選されたウールやカシミアを贅沢に使い伝統的な工程を経て織り上げられる生地は、まるで赤ちゃんの素肌のように滑らかです。……あれ。少し分かりにくかったですね。ここだけの話、「処女の内股」のように滑らかなのです。はい、失礼致しました。

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人間は、といいますか、特に女性は手触りのよいものなど感覚的に心地よいものを大変好みます。

ほとんどの男性は「れんこん」に特別な思い入れを持ちませんが、女性はれんこん好きであることが多い。それは彼女達が、「食感」でれんこんを楽しんでいるからです。

手触りも同じです。

女子服ブランドを見て回ると、格安のものであっても「手触り」に焦点をあてた服が本当に多い。高級になるとシルク、カシミアを使用するのがレディースの特徴ですが、女子服ではそれを模倣したつるりとしたポリエステルやアクリル、レーヨンなどがメインとなるわけです。

そして女性にはそういった手触りのよいものを一見して判別する本能的なものが備わっています。そのため、本人がそうと意識しなくても、手触りの良さそうな上質な生地のスーツを着ている人を「お洒落」「魅力的」と感じます。

また上質なスーツ生地には、それにしか存在しない上品な光沢が備わっています。ポリエステルのようにギラギラと安っぽくなく、ちょうどさらさらとした髪の毛のような光沢感ですね。

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これもまた着る人に気品を与えてくれ、装いにエレガントな雰囲気を加えてくれるものです。

こういうことからも、上質な生地を用いているものこそが、お洒落なスーツと言えるのです。

といっても、上に書いたような仕立ての良いスーツであれば、上質な生地を用いて仕立てられていることがほとんど。同じ手間を掛けるのに、より高く売れる上質な生地のスーツにせず、価値の下がる粗悪な生地のスーツにする理由がないからですね。

注意すべきは、トレンド性の強いスーツ。例えば現在、イタリア製のインポートスーツには、20万円〜30万円もするのに「耐久性に富んだ」「ストレッチ性のある」などという文句でポリエステルやナイロン、アクリル混紡の生地を採用しているものが少なくありません。これは仕入れの値段を下げ、同じ定価で売って儲かるためです。

語弊を恐れず言っておきます。

「化繊の入った、本当に上質な生地」は存在しません。

最高級のキッドモヘヤと希少性の高いモンゴル産カシミアを混紡した極上生地に1%のポリエステルが入っていたら、それは「最高級の生地」ではなく、「世界で最も、もったいない生地」なのです。

コーディネートで映えるスーツであること

さて、ここまでスーツの品質に関わることをメインにお話してきました。スーツは形が決まっているので、やはり仕立てや生地によって左右される部分が大きいのです。

ですがここで改めて、より単純な「見た目」に注目してみましょう。

スーツを選ぶとき、店員さんに「細かいストライプがお洒落」「色のアクセントがお洒落」という説明を受けた経験はありませんでしょうか。

もちろんそういった考え方も間違ってはいませんし、確かにお洒落に着こなせばおもしろいものです。

しかしスーツは何も、スーツだけで着るものではありません。必ずシャツと、ネクタイと、革靴に合わせてコーディネートするものです。

ですから本当にお洒落なスーツは「コーディネートで映えるスーツ」であるということを覚えておきましょう。

例えばあるスーツなどは、現在からすると古くさいイメージさえある分厚いツイル織の無地ブラウンで、単体で見たときには「軍服ですか?」というほどのものでした。

しかしコーディネートしてみるとどうでしょう。意外にお洒落な雰囲気があるのです。

我々がスーツを選んでいるときには、スーツそのものを見ていることが殆どです。

ですが、そのときにシャツやネクタイを思い浮かべ、コーディネートしたときの雰囲気をイメージできたら、そのときにこそ「本当にお洒落なスーツ」を選ぶことができるでしょう。

もちろん、合わせることの多いシャツとネクタイを持参するのも良いですね。

ちなみにですが、ファッションによほど自信のある人で無い限り、お洒落に着こなしやすいのは無地のスーツです。無地のスーツにストライプのシャツ、そして無地、ドット、小紋柄いずれかのネクタイを合わせるのが一番簡単で、非常にお洒落な着こなしですね。

 

いかがでしたか?

今回はお洒落なスーツの最も基本的な条件を、詳しく解説してみました。

自分に合ったサイジング、丁寧で身体に沿った仕立て、気品のある上質な生地、そしてコーディネートしたときにお洒落な色柄です。

この4点に意識して色々なお店でスーツを見てみると、今までとは全く違った物のように見えるはずです。

これまでブランドイメージなどでなんとなく良いと思っていたスーツに「あれ?」と思ったり、一見地味で何の特徴もないのに何でこんな値段なんだ?と思っていたスーツが理解できたり。

スーツは知れば知るほど世界が広がっていくものなので、面白いのです。

皆さんもスーツ選びの際には是非、こちらの記事を参考にしてくださいね。